教育のゴールは大学入試では決してない
【三宅】この英語教育改革の議論は、これまでも何度も重ねられてきていますが、結局は大学入試が変わらなければ、現実には何も変わらないという意見が少なくありません。とはいえ、2020年(平成32年)には、今の大学入試センター試験も廃止され、それに代わる「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)になりますね。そこでは英語だけじゃなく他の教科でも、多様な能力を多元的に評価選抜するために記述式の問題も導入すると言われます。英語については4技能を測定するということで、スピーキングやライティングも大学入試に入ってくると報道されていますが、実際にそのようになるのでしょうか。
【向後】3月に中央教育審議会の高大接続システム改革会議というところで、最終報告案が出されたところですけれども、そこには英語の4技能重視を明記しています。私はこの4技能の議論が後退しないことを、切に願っておりますし、もはや必然の流れと言っていいでしょう。併せて、高校2年生が中心になって受けることが検討されている「高等学校基礎学力テスト(仮称)」についても、同じく4技能型とされています。
【三宅】英会話学校のイメージは、外国人教師だけがいて、話す・聞くという、会話面だけを重視しているように思われがちです。けれども、当社は40年間にわたり「とにかく4技能が重要である」というスタンスを維持してきました。その結果、イーオンに通う小学校3年生で、スピーチコンテストで優勝し、英検3級、準2級に合格し、しっかりした英文も書けるキッズも出現しました。
【向後】すばらしいことですね。
【三宅】現在でも民間の英語検定試験である英検や、TOEFL iBT、IELTS、TEAP、GTEC、TOEICというような試験は、各大学の個別選抜において採択するケースが増えてきています。こうして大学入試の現場が変わることで、それに伴い高等学校・中学校・小学校での英語教育に、どのような影響・効果が出ると期待されていますでしょうか。特に高等学校での授業で、英語を英語で教えるということは、これによって促進されていくと考えていいのでしょうか。
【向後】高等学校における教育のゴールは、決して大学入試ではありません。私はそのことを常々、全国の教育委員会や先生がたに訴えてきました。ただし、そうは言っても、志望校合格は直近の目標でもありますので、大学入試が高校生活に与える影響が非常に大きいことは十二分に認識しています。
今後、高大接続システム改革会議でさらに議論を重ねて改革を進めていくことになると思いますが、入試のwashback effect(波及効果)にも注目したいと思います。例えば、センター試験でリスニングが入ったときに、高校でリスニング指導が入りましたね。私はある意味、これは成果だと思うんです。4技能が入れば、スピーキングも当然、視野に入ってくる。ライティングも入ってくる。高校の授業でも実際に話したり書いたりするということが増えてくるはずなので、それは大きな期待の部分だと思っています。
先ほど、三宅社長が個別試験で外部の資格検定試験を使う大学が増えてきているということを話されましたが、高大接続システム改革会議ではまさにそのことも視野に入れています。例えば、センター試験の後継となるテストを受けずに、外部試験だけでいいじゃないかといった議論さえされているのが現状です。
ただし今後の大学入試改革では、4技能を限りなく均等に評価していく必要があるのではないかと思います。おそらく、新しいテストの導入段階では、どうしてもスピーキングとライティングの評価割合が低くなる可能性は否定できません。けれども、できるだけ短期間で4技能均等に近づけないと、本来の英語教育改革にはつながらない。入試において、その辺のバランスをどこまで保てるかが重要なポイントになります。