また、労働基準法では、就業規則を作成または変更する場合には、従業員の過半数を代表する者や労働組合の意見を聴かなければならないことになっている。そうした民主的手続きを経ることにより、あまりにも不当な就業規則は作成できないよう担保されているのだ。

したがって、合理的な理由があり、必要な手続きを踏んでいれば、就業時間外に関する就業規則であっても原則有効であるといえる。

最後に、帰宅途中の「寄り道」はどの程度まで許されるかについても考えてみよう。

「日用品の買い物をするために、スーパーやコンビニに立ち寄る程度なら、その後通勤経路に戻った場合の事故は補償の対象。ただし、喫茶店や居酒屋へ一定時間立ち寄った場合、その後は通勤とは無関係と見なされ、立ち寄り後の事故は、補償されないと考えられる」(中町氏)

補償されるかどうかを分けるのは、寄り道の目的だ。業務と関係が深いもの、たとえば、同じ「飲み」でも、取引先との仕事上の会食後の事故などは、労災が認められる可能性がある。また、業務と関連がなくても、日常必要となる用事、たとえば通院、用便、投票などに立ち寄ること、会社帰りの英会話スクール通いなども、その後の事故は補償の対象となるのが通常とされる。

労災制度は、会社で働く従業員を、意外と手厚く保護してくれるもののようだ。

「仕事中の事故じゃないから、きっとダメだろう」とあきらめるのは、場合によっては早すぎるかもしれない。

(ライヴ・アート= 図版作成)