ちょっと長くなりすぎたので、最後に3つだけアドバイスをして終わりにしようと思う。
1.生活水準とプライドを元に戻す
2.なんでもいいから社会とつながりを持つ
3.自分がやってきたことを抽象的に捉えてみる
まず生活水準を元に戻す。とにかく普通の生活をできるようにする。あいつはケチくさくなったとか、落ちぶれたとか、いろいろ言われると思うけど全くそんなこと気にしないでとにかく普通の生活に戻る。入ってきている分しかお金は使っちゃいけないんだ。それからプライドも捨てた方がいい。君が感じている辛さのほとんどは君のプライドの高さからきている。そしてそのプライドってのがあるから、周りが君に声もかけられないし、手助けも出来ない状態になってる。だから、これでもかってぐらいプライドを捨てて、ちょうど1年生で部活にドキドキしながら入った時と、同じ気持ちで生きていくといい。
それからなんでもいいから社会と接点を作ること。学校に行ってもいいし、友達と旅行に行ってもいい。もちろん働くことも。とにかくなんでもいいから社会と接点を作っていくんだ。人は社会の中で生きていて、働くってことは社会に価値を提供するってことで、すぐには思いつかなくても接点さえあれば何かが見えてくるかもしれないからね。
自分がやってきたことはスポーツかもしれないけれど、その奥にあったものはなんなのかを考えてみること。スポーツを通じて伝えたかったこと、成し遂げたかったこと、スポーツを通じてなりたかったもの。スポーツは手段でその奥に目的があったんだと思って、考えてみてほしい。すぐには見つからないかもしれないけど、その奥にある目的がぼんやりとでも見えてきたら、きっと君は違う方法でもその目的は達成できるってことに気づいていると思うんだ。山頂が高くなれば手段はたくさんあるってことに気がつくからね。
引退後の人生は現役時代と少し違うけど、大丈夫。なんとかなるし、君ならなんとかできる。ピンチの時にそれを乗り越えられる強さを持っている人しか、トップアスリートにはなれない。それに、そもそも君は何にも持っていなかったんだから、スポーツを始めたあの時みたいに、また基礎練習から始めていけばいいだけなんだよ。
*本文は為末大オフィシャルブログ「THINK」(http://tamesue.jp/)から著者の了解を得て転載したものです。
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1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。http://tamesue.jp