何しろインドでは階層によってトイレまで異なる。以前インドに駐在していた日本貿易振興機構(ジェトロ)の河野敬氏も、最初はトイレが2つあることに驚いたという。河野氏はインドでビジネスをする際、「カースト+出身地+宗教+学歴」を見なければならないと指摘する。

北部と南部では顔立ちも異なり、基本的に仲が悪い。肌が比較的白い北部のほうが優位に立つという意識があるが、学歴が高ければ地域差やカーストを飛び越えることもあり、単純な方程式はない。チームでプロジェクトを遂行する場合には、現地のマネジャーと相談して決めることが賢明といえそうだ。

女性の扱い方も難しい。インドでは、近年、レイプ事件などが多数報告されている通り、夜道を歩くのは危ないので、女性社員を会社の夜のパーティーなどに誘う場合は父親や夫の承諾が必要だ。送迎も必須。ただし、全体的に女性蔑視の傾向はあるものの、カーストが高い女性の場合は欧米の大学に進学しているなどの例もあり社会的に高い地位についていることもある。

こうした女性に対する対応は中東にも当てはまる。エジプトに駐在していたことがある同じくジェトロの若林利昭氏によると、エジプトでも女性の社会進出はそれほど進んでいないものの、キャリアウーマンはそこそこオフィスにいるという。そうした女性は仕事も男性と対等にできる人が多いが、気をつけるべきことはやはりある。若林氏は知人からこんなエピソードを聞いたと明かしてくれた。

「ある日本料理店にクウェート人カップルがいて、女性が割り箸の割り方がわからなかったそうなんです。それを隣のテーブルにいた日本人男性が親切に教えてあげたところ、クウェート人男性からひどく睨まれたというんですね。クウェートでは、お相手がいる女性に対して男性がむやみに話しかけたりしてはいけないのです」

中東では「男性が女性を庇護してあげている」という「所有者」意識が強い。たとえ親しくなった同僚とはいえ、日本人男性が部下の女性の肩などを触ったら大変なことになる。

そういったことも含め、中東全体を覆っているのはイスラム教。生活も仕事もすべてはイスラム教を抜きに語れないといっていい。お祈りの時間は仕事中であっても退席することは認めざるをえないし、豚肉は食べない、お酒は飲まないなどの制限があるので、日本流の「ノミニケーション」は皆無と思ったほうがいい。