高額な利用料金と暮らしやすさは別

サービス付き高齢者向け住宅のデメリットは要介護度が高くなったとき、住み続けることができなくなる点だ。しかし、賃貸契約であるぶん身軽でもある。介護が必要になったら介護付き有料老人ホームなどへ移るという考え方も可能だ。

サービス付き高齢者向け住宅が生まれたことでもわかるように、最近は有料老人ホームの形態も様変わりしている。

「ひと昔前は富裕層が、老後は自然の中でのんびり過ごしたいと、リゾートにある老人ホームの居室を何千万円かで購入し、入居するケースが多かったのですが、今は『医療機関が近い』『介護が行き届いている』『家族が訪ねてきやすい』といった、より現実的な要望を満たす施設が大半です。入居一時金も、かつては数千万円台が当たり前でしたが、100万円台に下がってきていますし、月額利用料金も特養と同様、年金でまかなえる程度に抑えているところが増えています」と語るのは主に首都圏と関西圏を対象に有料老人ホームや介護施設の紹介事業を営むケアプロデュースの安藤滉邦代表。

【ケース】サービス付き高齢者向け住宅に入居した要支援2の人の場合

施設を運営する事業者も入居率を上げなければ健全な経営はできない。時代のニーズに応じて多くの人が入居可能な有料老人ホームがつくられるようになったのだ。

だが、それでも施設によって価格は大きく異なる。入居一時金が1億円以上で月額利用料が50万円といった例もある。

「そういうところは設備もサービスも職員の対応も一流ホテル並みの富裕層向けです。しかし、それ以外の施設の価格は土地代によって決まるといっていいでしょう。たとえば東京の世田谷区は地価が高いため、施設の入居一時金や月額利用料は高額ですが、隣の神奈川県郊外なら値段が下がります。首都圏でも場所を選ばなければ、入居一時金が30万円で月額利用料も15万円程度といった施設はあります。資産や年金受給額に応じて、入居可能な有料老人ホームは見つかるはずです」

では、余裕があったとして、高級であるほど、暮らしやすいのだろうか。

費用面とは別に有料老人ホームを選ぶうえで見逃せないポイントは、いうまでもないが、入居者が気分よく快適に過ごせる空間であることだ。施設内はひとつの社会を形成している。そこには地域性や微妙な階層の違いがあり、それが居心地のよし悪しを左右する。

「高級ホテルに泊まり慣れた人が安価なビジネスホテルに泊まることになったら設備や職員の対応を含めて不満が出ます。逆に、高級な施設でも、ご近所とざっくばらんに付き合う生活を望む人にとっては、お高くとまっている、よそよそしい、と感じることがあります。老人ホームは長く住み続けることになるわけですから、精神的に辛くなります」

高齢者はちょっとした環境の違いによって体調を崩すもの。こうした点にも配慮が必要だ。