ホテルスタッフに感謝の気持ちを伝える
一流の客は、サービススタッフにまでサービスすることを忘れない。田中さんが感動したのは、こんな客の心遣いだった。
「おいしいケーキ屋さんを尋ねられたお客様が戻っていらしたとき、場所はおわかりになりましたかとお聞きしたら、『ええ、ありがとう。すごくおいしいケーキが買えました』とおっしゃって、『これをあなたたちに』と、私たちにお土産をくださったんです」
そしてスタッフの名前を憶えておいて、後日、ホテル気付の手紙やメールで滞在中のお礼を言うのも彼らのマナーだ。
「『誰々がこんなことをしてくれた。それをどうしても伝えたかった』と、わざわざ会社宛てにメールをくださる方もいらっしゃいます。スタッフにとって、とても励みになります」
自国にはないカルチャーに興味津々
汐留にある最高級ラグジュアリー・ホテル「コンラッド東京」。ヘッドコンシェルジュの阿部泰年さんは、国際的に名高いコンシェルジュのネットワーク組織「レ・クレドール」の国際会員メンバーだ。阿部さんの記憶に強く残っているのは、とあるミシュランの三ツ星和食店で食事をするために日本にやって来た外国人夫妻だった。
夫妻が「こういう店に行くときのマナーや服装を教えて」と阿部さんに尋ねてきたので、格式の高い店に行くとき、日本の女性は着物を着ることが多いと答えたところ、今度は「いい着物を買える店を教えて」と言う。そこで阿部さんが銀座の呉服店を紹介すると、何十万円もする着物を買って食事に行ったそうだ。
「自国にはないカルチャーやマナーがあれば、『教えてください』という姿勢で学ぶ。そういう考え方はすばらしいと思います」
阿部さんの下で働く女性コンシェルジュの亀井理世さんも、外国人客が楽しみを見つける観察眼の見事さについてこう語る。
「ジョギング中にいろんな発見をなさるようで、『あそこにあるのは何という店?』などとよく質問されます。ご自分の興味のあるものを探し、それを楽しむ勘がすばらしい。旅先で走る計画を数カ月も先まで立てていて、『このアプリはジョギングに便利なんだよ』とスマホを見せてくださる方もいらっしゃいました。おそらく仕事でも私生活でも段取りよく、感度を高く持っておられると思います」