死亡原因が特定できない場合、事件性があった場合

実況見分と遺体の検案で死亡原因が特定できなかったり、事件性が認められたりする場合は、死因が特定できるまで詳細に調べる必要があるため、遺体は監察医務院等の施設に搬送される。

その際、死因だけが不明確の場合は行政解剖に、犯罪に関係する可能性があるなど事件性が認められた場合には司法解剖となる。病院での病理解剖とは違い数時間で終わるとは限らず、2日間待つ例もある。さらに数万円の費用を遺族が負担しなければならない。行政解剖・司法解剖ともに遺族の承諾は必要ないため、断ることはできない。

解剖施設に搬送されると、おおよその終了時間が知らされるので、それまでに葬儀業者を手配し、遺体を迎えに行ってもらう。だが、このときの引き取りには「棺」が必要になるため、故人の身長・体重等を業者に伝えて、故人に合った棺を用意してもらう。時間的には余裕があるため、パンフレットなどを持ってきてもらって検討してから依頼してもいい。

 

役所への手続きと預金凍結

死亡診断書(死体検案書)をもらったら、役所へ死亡届(死亡診断書・死体検案書ともに見開きの半面が死亡届となる)を提出し、火葬許可証を発行してもらう。この手続きの流れで斎場の空き状況を確認し、火葬場の予約を取ってもらうため、届け出全般を葬儀業者に代行してもらうことが多い。

死亡届を提出した時点で、銀行へ死亡情報が流されると言われている。このときまでに、当面必要であろう預金を引き出しておかなければ、以後預金が凍結されてしまうので注意が必要だ。凍結後は、相続の権利者全員の署名・捺印の入った「遺産分割協議書」を作成しなければ、預金を引き出せなくなってしまう。

葬儀となると、葬儀費用のほかにもお布施や斎場の利用料など、何かと現金が必要になるため、まとまった金額を引き出しておいたほうがいい。生命保険の保険金をあてにしている場合でも、通常、受け取るまでに数日はみておかなければならないため、「亡くなったら、まずはATMへ走れ」と、アドバイスする葬儀業者もいるくらいだ。

以上、自宅での死去に直面した場合を状況ごとに説明したが、自宅での死去すべてのケースに共通する、絶対にしてはいけないことがある。

それは、「遺体を動かしてはならない」ことだ。私が祖母を自宅で亡くしたということは前述したが、場所が風呂場だったため、「寒くて可哀想だ」と寝室に移動し、服を着せてしまった。このため警察官からたいそう怒られ、父が代表者として取り調べを受けるはめになった。

ただでさえ気が動転してしまう身近な人の死だが、それが自宅でとなるとさらに混乱してしまいがち。そういう事態に直面することは避けたいものだが、万が一のときは、かかりつけの病院がある場合は病院へ、そうでない場合は警察へ、そしてできるだけ早いタイミングで預金の引き出しをする。この3つだけでも覚えておくと、緊急時の精神状態に余裕が生まれてくる。