リストラの対象者の明確な基準など、人事部のホンネを徹底的に洗いだした溝上憲文さんの最新刊『人事評価の裏ルール』へ解説文を寄せたのは、リストラ候補から一念発起して、社内起業での功績が認められ、シチズン時計株式会社で史上最年少の上級顧問に就任した経験を持つ俣野成敏さん。目先の評価に踊らされることなく、ハイパフォーマンスで会社に貢献し続けるために意識するべきこととは?
「指示待ち」から脱出、最初にすべきこと
「与えられた仕事はきちんとするけれど……」というタイプの人は、企業の規模の大小にかかわらず、皆さんのまわりにもいるのではないでしょうか。
少し厳しいかもしれませんが、これからの時代、つまりビジネスの環境が大きく変化し続けている今、自分の頭を使って一から提案することができないなら、先の見通しは明るくありません。
このような「思考停止」状態を脱するために有効なのは、小さいことでもいいので、「社内一になる」という事実を積み重ねることです。社内一になるというのは、別に難しいことではありません。
少し極端な例かもしれませんが、以前、講演の仕事で富山県を訪れた際に、地元の方から「近くに、世界一美しいスターバックスがあるので行きましょう」と誘われて訪れ、ロケーションの素晴らしさに感動したことがあります。誰もが知っているコーヒーショップでも、何か秀でているポイントを際立たせることで、多くの人の印象に残る。これは企業の中での働き方にも応用できるヒントが隠されていると思います。
一番簡単なのは「最初の一人」になること。これからの時代、あらゆる業種で、プロジェクト単位で仕事を考えていくことがより重要になってきます。現状の仕事の小さな改善でもいいので、「小さなプロジェクト」を自分の中で立ち上げて、その最初のメンバーとして責任をもって完遂する。このような考え方だと、現状の仕事の枠を超えるケースも増え、組織の壁を超えて働くことができるようになります。
組織の壁は分厚いように感じることが少なくないかもしれません。それは「壁」を打ち破ろうとするから。打ち破るのではなく、越えればいいわけです。自分発信のプロジェクトで組織の壁を越える「練習」をすることで、人事からの評価は大いに変わってくると思います。
どこの会社でも、今までの既存の組織の枠に収まるような仕事だと、質と量を追求するだけに陥りがちです。しかし、「これはどこの部署がやるんだ」という曖昧な仕事があれば、それこそがチャンスとなります。問題を解決することで目に見えた成果が出やすく、最初に手がけた者として「社内一」詳しくなれるからです。
※本連載は書籍『人事評価の裏ルール』、解説からの抜粋です。
1993年、シチズン時計株式会社入社。リストラ候補から一念発起。社内起業での功績が認められ、33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢、さらには40歳で本社召喚、史上最年少の上級顧問に就任する。この体験をもとにした『プロフェッショナルサラリーマン』を筆頭に、これまでの著作の累計は26万部を超える。2012年独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設してプロフェッショナルサラリーマンの育成にも力を注いでいる。
※俣野成敏オフィシャルサイト http://www.matano.asia/