沢口は大阪府生まれ。中学、高校時代はテニス部に籍を置き、真っ黒に日焼けした、お茶目で、人を笑わすことが大好きな女学生だったという。その一方、男子生徒がファンクラブをつくるほどの美少女だった彼女は、高校卒業と同時に、第一回東宝シンデレラに選ばれて芸能界に。そして、正にシンデレラのようにスター街道を駆け上がっていった。

「デビューしてから、私の中にいつも沢口靖子が二人いるような気がしていました。私自身と芸能界にいる沢口靖子です。芸能界の沢口靖子は、皆さんが期待したり、理想とする沢口靖子。私自身もそれに近づこうと懸命でした。ですから、イメージには合わないと思った大阪弁も、大阪の血もずっと封印していました」

その封印を解いたのが1999年秋から始まった、KINCHO『タンスにゴンゴン』のCMシリーズだった。あのコテコテの大阪のノリのCMを、記憶している読者は数多くいるに違いない。

「私のイメージと、そんなに違いました? でも、あれはもともと私の中にあったものを、誇張したり膨らまして表現したんです。あのCMで役柄が広がったし、今回の舞台のお話がきたのも、そのお陰かもしれませんね(笑)」

テレビ朝日系土曜ワイド劇場『鉄道捜査官』の撮影風景。この日、現場は霧に包まれた。臨場感があふれる中で、沢口さんは次々と激しいアクションシーンを演じていった。「本当は体育会系なの」と自称するだけあって驚くほど身のこなしは軽やか。昼食時、村川透監督と打ち合わせをしていたが、カメラを向けるとたちまちお茶目さんに。

テレビ朝日系土曜ワイド劇場『鉄道捜査官』の撮影風景。この日、現場は霧に包まれた。臨場感があふれる中で、沢口さんは次々と激しいアクションシーンを演じていった。「本当は体育会系なの」と自称するだけあって驚くほど身のこなしは軽やか。昼食時、村川透監督と打ち合わせをしていたが、カメラを向けるとたちまちお茶目さんに。

沢口は、長年にわたって葛藤してきた女優沢口靖子と自身との距離が、5~6年前から少しずつ近づき重なってきたという。それは、自分らしさを表現することを意味し、そのキッカケを与えてくれたのが舞台での役作りだった。

「それまでも、自分の中にないモノで演技はできないと漠然と感じていましたが、舞台を重ねるたびにはっきりしてきました。幕が開いて幕が下りるまで、役の感情を持続していかなければなりません。自分の中にあるモノで役の感情や心の動きを演じていなければ継続していけないと思うんです。役作りは自分の内面を探る自己分析につながります。それはある意味でとても怖いことです。結局は、自分を少しでも高め、磨いていくしか方法はないんでしょうね」

今回の共演者は、ミヤコ蝶々の父親役に関西お笑い界の大御所、西川きよし。漫才の相方で夫でもあった南都雄二は、風間トオルが演じる。

「風間さんとは一度ご一緒していますし、芸達者の西川さんにはいろいろお聞きして、蝶々さんのものまねではなく、生き方に少しでも近づけたらと思っています。これまでの役柄とはまったく違います。このお芝居は心を裸にしてウソをつかないこと。少しでも構えたり、気取ったりすると、蝶々さんではなくなってしまいます。心と体(行動)がいつも一緒で、正直に生きてきた方ですから」(文中敬称略)

(山川雅生=撮影 撮影協力/リーガロイヤルホテル(大阪))