家庭篇:人を不幸にする「禁断の果実」とは?
[家庭満足度]ハッピー父さん 85点 VS 不機嫌父さん 43点

年収で満足度が測れないなら、幸せの源泉は果たして何か。「妻子」の答えが最も多かったのは年収300万円台のハッピー父さんたち。96%――。これはほぼ全員と言っていい。次いで、年収1000万円以上のエリート父さんも「妻子」が94%と高い。

反対に「妻子」が最も少なかったのは、年収1000万円以上の不機嫌父さん。「週末に1人で出かける人」が39%と4タイプの中で断トツで、どことなく孤独な姿が浮かび上がってくる。

この対照的な結果には、自由になるお金や行動範囲の広さも多少は影響しているだろう。不機嫌父さんは、おこづかいが多くて行動範囲は広い。職場と家庭に悩みを打ち明ける相手がいなければ、キャバクラへ通って悩みを聞いてもらうこともできる。

そうなると、家族に話せない秘密ができるのも不思議ではない。妻の愛情を感じられないのも、離婚を考えるのも、家の外に多くの選択肢があるという理由が考えられる。人間には知らないほうが幸せな「禁断の果実」があるようだ。

ハッピー父さんは地域のつながりや地元も大切にする。その点では、「家族」「絆」「仲間」という言葉を好み、上京志向が低い20代の“マイルド・ヤンキー”とメンタリティーが近い。彼らにとって、広い世界で活躍することや過酷な競争はまったく無意味。

世代は離れているが、ハッピー父さんも、出世競争にあくせくするより、狭い世界で居心地のいい人間関係に癒やされることを選んでいるのは同じだ。この一致は偶然でなく、働き方や生き方の価値観の変革が起きているのだろう。

不機嫌父さんがもし自己変革を望むなら、1度競争の世界から降りて年収800万円くらいの仕事を選ぶ手もある。ハッピー父さんのほうも、リストラなどのリスクにも注意したい。両者が互いに歩み寄った中間地点が、最も安定的で満足感の高いポジションになるはずだ。

◆家族に仕事の悩みを話す人
→ハッピー父さんは、職場だけでなく家庭にも仕事の悩みを話せる相手がいる。一方、不機嫌父さんは職場にも家庭にも仕事の悩みを打ち明ける人はいない。誰に相談しているのだろうか。

◆一番幸せな週末の過ごし方が「家族と過ごす」の人
→ハッピー父さん:1位/家族と過ごす 72%、2位/趣味 21%、3位/1人で出かける 2.9%。不機嫌父さん:1位/家族と過ごす 46%、2位/趣味 32%、3位/1人で出かける 9.0%

◆料理をする人
→ハッピー父さんは半数近くが料理をする。それだけ自宅にいる時間が長く、家庭内で一定の役割を担っていることをうかがわせる。

◆家族には言えない秘密がある人
→4タイプの父さんの中で秘密を持っている人が最も少ないのは300万ハッピー父さんで、36%。1000万不機嫌父さんが最も多い63%。この対照的な結果が、家族のつながりと満足度の深い関係をうかがわせる。

◆ワークライフバランスがとれている人
→不機嫌父さんが残業の連続で慢性的に疲れている一方で、家族と過ごす時間が多いハッピー父さんは、当然ワークライフバランスにも自信があり、8割近くがバランスのとれた生活を送っていると回答した。

◆地域とのつながりがある人・地元に愛着がある人
→ハッピー父さんは、“マイルド・ヤンキー”と同様に、地域のつながりが充実している。対して不機嫌父さんは、地域のつながり、地元への愛着が4タイプの父さんの中で最も少なかった。仕事や稼ぎがそこそこでも、家族やご近所の人間関係が充実していれば幸せが得られるのだ。

◆「妻に愛されている」と感じている人・セックスレス(月1回以下)率
→両者の間でより大きい差が出たのは仕事関連の項目よりも、家族に関する項目だった。なかでも「妻の愛」の差は30ポイント近くに。仕事より妻の愛が幸福度に影響するといえそうだ。

◆育児に積極的にかかわった、かかわっている人
→夫が育児に積極的にかかわることで、妻から感謝され、子どもとの関係が良くなり、家庭満足度が上がるという好循環が見て取れる。育児が大変な時期に父として夫としてどう振る舞うかは、将来の家族関係を大きく左右する。パパは頑張りどきだ。
博報堂ブランドデザイン若者研究所 原田曜平(はらだ・ようへい)
1977年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、博報堂入社。著書に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)など。
(伊田欣司=構成)
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