明治から昭和にかけて活躍した作家の中島敦さんの作品に、『名人伝』がある。

紀昌という男が、弓の名手になりたくて、名人の誉れ高い飛衛に入門する。厳しい修行の甲斐があって、紀昌自身も名人と呼ばれるようになるが、次第に弓をとらなくなる。

ある日、紀昌に弓を見せた人が、驚く。紀昌は、それが弓であることをすっかり忘れていて、何の道具かわからなかったのである。