真面目すぎると長生きできない

――ストレスがかかるとNK細胞の活性が低下する、ということは感覚としてよくわかります。医学的にはどれほどの違いがあるのでしょうか。

【奥村】「フィンランド症候群」として世界的に話題になった事実があります。北欧フィンランドは社会保障制度が充実しているため、個々人の健康管理がおろそかになりやすいといわれています。そこでフィンランド政府は1974年から15年をかけて、次のような大調査を行いました。

生活環境の似ている40~45歳の男性1200人を半々にわけ、一方は酒やタバコを制限し、生活リズムを保たせ、年に2回の健康診断受診を義務付けました。残る半数は飲酒や喫煙、食事の内容にも制限を設けず、自由に生活してもらったのです。

その状態を5年続け、10年間の観察期間ののちに集計したところ、驚くべき事実が判明しました。健康的だったはずの前者のグループは600人中67人が死亡したのに、自由放任の後者は46人しか亡くなっていなかったのです。

――徹底的に健康を管理したグループのほうが不健康になった。皮肉な結果ですが、それはなぜですか?

【奥村】2つの問題点が指摘されました。1つは、健康管理グループではコレステロールの数値を徹底的に管理したことです。当時はコレステロール値は低いほどいいという常識があったからです。もう1つは、あまりに窮屈な暮らしを強いられたために、免疫の働きが弱ったのではないかということです。

ストレスは伝播します。仔を産んだばかりの動物から仔を取り上げるとストレスから免疫力が下がることが知られていますが、健康な動物の群れに仔を失った個体を一頭交ぜると、他の個体の免疫力も低下します。

人間にも同様のメカニズムが働くと考えられ、たとえば暗い人生観を持つ人と付き合えば自分の心まで暗くなり免疫力が衰えます。風邪をひきやすくなりますし、癌も発症しやすくなります。ですから、付き合う相手を考えなくてはいけないというのは本当なんです。