「事実をつかめば、勝負あり」
ジェニーン氏は、経営者の存在意義は成果のみだと言っています。そのためには、ハードワーカーになり、現場重視は当たり前のことなのです。ジェニーン氏は机上の空論に陥ることを恐れて、わざわざヨーロッパの現場に出向いて、現場の人と膝を突き合わせて議論し、現場の匂いや独特の感覚を把握しようと努めました。
ジェニーン氏は、経営は鍋の中でスープをつくるようなもので、ずっと見ていなければ思うようにいかないと言っています。確かに、日々発生する事実をつかみ、次の経営へと活かしていく……その積み重ね以外に、成功する経営法などないのです。柳井さんは、「事実をつかめば、勝負あり」といったことを、よく話していました。
かつて私がユニクロでお世話になっていた頃、柳井さんは、寝ても覚めても経営のことを考えていて、縦・横・斜めに数字を眺め、その背後にあるものを把握するための労を惜しみませんでした。こうした姿勢を私に見せ続けていたのは、「がむしゃらに仕事しろよ」というメッセージだったと思っています。徹底的に教えられたことは、「経営者は経営をしろ」ということです。
経験のみが成長を後押ししてくれる……まさに実感です。その意味で、柳井さんから薫陶を受けたことは、私の宝であり財産です。
※本連載は書籍『プロフェッショナルマネジャー・ノート2』(ハロルド・シドニー・ジェニーン著・玉塚元一解説)からの抜粋です。