「ジョブロー」では本当のプロになれぬ

――自分なりのキャリアを築き上げていくためのポイントは何ですか。

【白藤】キャリアを獲得するには、理論化された自分の職種計画、能力育成プラン、それから実践の機会の獲得の3つが重要です。会社がこうしなさいというコースをこなしていくのではなく、あくまでも自分の軸が入った自分発のキャリアプラン、能力開発をどう作っていくのかとことん考えるべきです。数年で部署を変わるジョブ・ローテーションにもいい面はありますが、もしグローバルな舞台で活躍したいなら、「プロ職」としての気概と準備が必要です。

――日本人の中には自分で決めないで、上司や会社に決めてほしいという依存心が強い人もいます。それはそれで会社にとっては使い勝手のよい人材なのですが、それだとこれから通用するキャリアは作れない?

【白藤】例えば、外資のグローバル企業に生粋の日本企業の人が入ろうとしても、能力要件が全然ずれていて合わないのです。そのためにはグローバルスタンダードの職務要件、能力要件の軸に合ったキャリアを作っていくことは大変重要です。たとえば私が1990年代後半に米系大手企業に入ったときは、マーケティング職に求められるのはマーケティング知識と技術の2つでした。日本ではMBA(経営学修士)と技術修士の2つを持っている人はなかなかいませんが、海外では2つの要件を満たして一人前。こうした複合型の要件を持った人材がプレーヤーとして活躍しています。

▼2つ以上の「武器」を作れ
――それは会社が身につけさせてくれるというより、自分で習得するわけですね。白藤さん自身は今の仕事に就くためにどういうキャリアプランを立てたのですか。

【白藤】私の場合は30代の普通の会社員時代にグローバルでコンサルタントをやりたいと思いました。それで欧米企業の人たちをモデルに政治、経済、経営の知識について博士課程までいって深く学び、さらにハイテク関係の技術・知識を修得しました。それから経験を積むためにいくつかの企業の門を叩いて専門キャリアを身につけてきました。

欧米ではアメリカでもドイツでも大学に入るときに普通にキャリアプランを描いています。大学の専攻は自分が目指す職務要件と直結しています。たとえば工学部に入った人は、こういう技術を学んで就職し、次にMBAをとったら今度はこれくらいのランクのマーケティングのマネージャーで就職したいというプランを描いています。