今だからできる効果的な投資
だからといって大慌てする必要はない。前回、私はプレジデント誌で市場の下落時には日本人として自信が持てる企業を買い支えるべきだと主張したが、それは今でもまったく変わっていない。株で買い支えることも一つの手段だが、今だからこそ効果的な手法があるのでぜひ紹介したい。
リーマンの破綻を経て明らかになったことが一つある。それは、どの国の政府にも「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル(大きすぎてつぶせない)」というコンセンサスが確立したということだ。これはGMやクライスラーなどへの政府支援を見ればわかるとおり、金融機関のみならず、事業会社にもあてはまる。
これを逆手に取って、大きくてつぶせない企業だけを集め、その倒産リスクを束ねた新しい指数をつくり、そこに投資するのだ。ベースとなるのは、企業の信用リスクを取引するCDSだ。
現実にはほとんどありえない話だが、例えば日本を代表する企業であるトヨタ自動車や新日本製鉄が倒産しそうになったとする。その場合は、日本政府が支援することになるだろう。CDSの取引対象は株式ではなく、返済順位の高い一般債権なので、公的支援が行われると政府保証となる可能性が高い。
信用不安が回復すれば価格が上がり、万が一でも政府リスクに置き換わって値上がりするかもしれない――。一般の投資家にもリスクがわかりやすい「逆張り」商品が、CDSで組成可能なのだ。
通常の市場状況ではこんな投資機会は滅多に訪れない。金融機関全体に投資余力がない現在だからこそ生じる、絶好の投資機会だといえる。メディアでCDSは悪玉扱いされることが多いが、正しい手法で、適切なリスクを選択すれば、こんなに魅力的な投資商品をつくることもできるのだ。
実は今、マークイットグループは複数金融機関と連携し、新しいETF(上場投資信託)や公募投信の企画を進めている。新商品では、現在公表されている信用リスク指数のみならず、倒産リスクがわかりやすい銘柄のみを集めて指数化することも検討している。先ごろ、日本経済新聞紙上でこの商品に関する記事が出て大変な関心が寄せられた。