40年前、30代のときに書いたベストセラー『企業参謀』は世界のリーダーのバイブルとなった。国をも動かす名参謀の力量とはどんなものか。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/13879)

薄煕来もイメージが湧いてからの動きが速い

権力闘争に敗れ、失脚した薄煕来元重慶市党委員会書記も、大前氏のアイデアを最大限活用した。(AP/AFLO=写真)

中国共産党の権力闘争に巻き込まれ、スキャンダルで失脚し、無期懲役を受けた薄煕来(元重慶市党委員会書記)。彼とは彼が大連市長時代に表敬訪問して知り合った。

2度目の表敬訪問の際、ただ挨拶するだけでは面白くないと思って、大連の問題点を勝手に考えて披露した。当時、大連には日本が主導してつくった工業団地があって、日本企業が約3000社きていた。日本から部品を輸入して、大連の工場で組み立てる賃加工モデルが主流で、それなりにうまく回っていた。

ところが90年代後半から日本の部品会社がどんどん中国に進出するようになった。そうなると日本からの部品輸入では間に合わなくなり、長江デルタ(上海、江蘇省、浙江省を中心とした経済圏)や珠江デルタ(広州を流れる珠江のデルタ地帯を中心とした経済圏。広州、深セン、珠海などが主要都市)から、取り寄せなければならなくなる。しかし、当時はまだ陸路のインフラは未整備で、広東省から大連まで陸送すると9日もかかるし、海路は海路で煩雑な輸出入手続きを要する。

「大連の賃加工モデルは成り立たなくなって、新しい組み立て会社はきませんよ」と脅かし半分で説いて、「それじゃ」と帰ろうとしたら、「ちょっと待て。おまえはコンサルタントだろう。問題を指摘するだけでなく、解決策は何なんだ?」と食いついてきた。

解決策までは考えてなかったが、そこはコンサルティングで鍛えた瞬間芸がモノをいう。