■者に聞くな、物に聞け

不良が出たり、機械のトラブルが発生したりしたときに製造工程の部門の管理監督者などは部下からの報告に頼ってはいけない、という戒めの言葉。

「者」とは「人」のこと、「物」とは「現場」「商品・製品」のこと。

管理者は部下の報告を鵜呑みにせず、自分の目で現場を見て何が起きているかをつかまないと「事実」は見えてこない、という教えが代々継承されている。

「現地・現物・現実」を大切にしなさい、というトヨタの三現主義の完全なる遂行がいつの時代もトヨタのリーダーたちのファーストプライオリティーといえる。

■カイゼンは巧遅より拙速

「巧遅(こうち)」とは、出来はいいが、仕上げるのに時間がかかることを指す。一方、「拙速(せっそく)」とは、出来映えそのものはいまひとつだが、仕上がりが速いこと指す。トヨタ内での評価は後者のほうが高く、荒削りでも、思いつきでもいいから、とにかく速くやることがベターと考えられている。

「6割いいと思ったらやれ」というのもトヨタの口グセだが、失敗を恐れず、また頭でっかちにならず、まずは行動してみて、1分1秒でも速く仕上げるということも、カイゼンの一つといえるのだ。

■事前の一策、事後の百策

ものごとは早めに手を打てば、「一策」ですむが、何かコトが起きてからでは「百策」が必要になってしまうことが多い、ということ。つまり、事前の準備を周到にしておくことの重要性を伝えるものである。

自動車の生産現場においては、すべりやすい機械の上に立って作業するケースや高い場所にのぼって作業することもあり、悪条件下で仕事をせざるをえない状況は少なくない。そんなときも、想定できる限りの前準備をすることが、あとでバタバタして、時間とコストを無駄遣いしないための対策となる。