ではここで欧米系と中国系に転職して成功し、バリバリと活躍する人の例を見てみよう。
日本の銀行を皮切りに複数の外資系を渡り歩き、現在は米国系金融で働く山田和久氏(39歳/仮名)は、学生時代にアメリカに住んでいたこともあって、物おじせず自分の意見をハッキリと言うフランクな性格だ。銀行にいたときには上司から「生意気だ」と言われていたのに、外資では「おもしろいやつ」と見られるようになり、俄然、仕事がやりやすくなったと語る。
「私は無理して好かれようとしたわけでなくて、外資の水が合っていたんだと思います。入ってみてわかったのは、米国系金融では人事異動はほとんどなく、その人が本国に帰らないかぎり同じ上司に仕えるということ。そして、その上司が自分のクビを切れるなど思った以上の権限を持つということでした。ですので、上司とコミュニケーションを取ることは重要だと思います」
日本企業の会議では、上司が一方的に語り、部下はただ黙って聞くだけという風景もよく見られるが、「米国系ではそれではだめ。ただのイエスマンになってゴマをするとか、食事のお礼を丁寧に言えばいいとか、そういう問題ではない。ビジネスの現場で自分をアピールすること。つまり、ディスカッションの場で自分の意見をきちんと言えなければいけません」と言う。
山田氏は上司に堂々と意見もしたが、仕事の成績がよかったこともあり、非常に気に入られていた。部下が稼いだお金を上司がピンハネする報酬体系になっていたので「稼いできてくれる部下は何だかんだ言ってもかわいい」という金融業界ならではのブラックな一面もあったのかもしれない。
日本企業では考えられないことだが、スタバのコーヒーを片手にポケットに手を突っ込み、アメリカ人の上司のデスクでラフに語り合えるほどの関係を築き上げるまでになった。
「だから、やっぱり英語が苦手な人は不利ですよね。苦手意識があると、どうしても口数も少なくなるので。それと、仕事のうえで自分への権限移譲は日本企業よりずっと大きく、即断即決が求められるのが外資の特徴。任された仕事は、すべての責任を負うぐらいの気概と決断力が求められます」
裏を返せば、日本企業で上司の言いなりになり、滅私奉公的な習慣が染みついている人だと外資に適応するのは難しいのではないか、と山田氏はアドバイスする。