こうした政府の動きに呼応するかのように、東京電力(東電)は、海外発電事業に向こう10年間で1兆円以上の投資を行う中長期成長宣言「2020ビジョン」を発表した。今、原子力発電の導入を検討する新興国や中東諸国は、東電の実力を熟知するとともに、そのオペレーション能力の高さを非常に高く評価する。
「世界的な原子力発電への需要の高まりに東電もこたえる」
清水正孝東京電力社長は、力強く語る。
「日本の高い技術、保守、オペレーションが実現すれば、国際市場、国際的な日本の原子力の存在は確実に高まる。信頼性の要素が非常に大きいビジネスなので、いろいろな国が原子力をルネッサンスとしてみたとき、やはり一つの実績があれば、将来的にも広がりをみせると思う」
清水が言うように東電が海外に出ていくことを喜ばない日系プラントメーカーはない。政府も同じで、政府、役所とが一体となって原子力の旗を振り、人を配して資金の手当てもしているのが現状だ。
冒頭のトルコはいうまでもなく、東南アジアで高い成長を続けるベトナム、中東での受注が期待されるヨルダン(11月早々にも経産省政務官を派遣)、「何としても発注が予想される40基のうちの過半は押さえる」(経産省幹部)と意気込むインド。そして100基以上の計画が見込まれる中国。旺盛な各国の原子力需要に、衰えは見えない。経産省幹部が“試金石”と見立てるインドでは、インド政府が発注権をインド最大の財閥である「リライアンス・ADA・グループ」に委譲することは確実で、すでにそのパイプづくりも終えた。