有料老人ホームに入居できるだけの財力があれば介護の問題の多くが解決するが、そうでないときは他の施設を検討することになる。特養は介護保険が利用できて費用が安価だが、要介護度が3~4以上(中度から重度)でないと後回しにされがちだし、待機者が多く入居には1年以上もかかることが珍しくない。老健は要介護者の帰宅を目指す施設なので長期利用を前提としていないし、治療を受けながら自宅復帰を目指す療養病床は18年3月末で廃止されることになっている。サ高住は、バリアフリーなど高齢者が暮らしやすい配慮のある賃貸住宅のことで、介護事業所が併設されているので訪問介護や訪問看護を利用することができる。どの施設にも利用のしやすさや費用面で長短があり、親の状態、経済状態を見ながら選ぶしかない。
在宅介護も低廉というわけではない。自分たちで何でもやれればいいが、介護できる家族がいない場合は、訪問介護でまかなえない部分を私設ヘルパーに依頼するしかない。日中の世話を毎日お願いすることになると月30万円はかかる。高額に思えるが、有料老人ホームの月額費用と同等なので、お金がある人は選択肢の一つとして考えることができる。
介護施設や費用の問題は、自分たち夫婦にもそのまま当てはまる。
「退職後は旅行に行きたい、趣味を楽しみたいと、お金をどんどん使ってしまうと、介護状態になったときに行き詰まってしまいます。80歳になったとき1人1000万円の貯金を残しておきたい。夫が先に倒れるケースが多いので、そこで貯金を使い果たすと妻の分がなくなってしまいます」(結城先生)