介護は最初の半年で200万円必要

リハビリで回復できればよいが、退院後に介護が必要になることも多い。現役世代は親の介護と、自分たち夫婦の介護を考えることになる。

「差し迫った課題は親の介護ですが、一番軽んじられているのは、どの時点で死を考えるかということ」と介護の現場にも詳しい淑徳大学准教授の結城康博先生は指摘する。

「今の医療技術では突然死でない限り、胃に栄養を入れる胃ろうや人工呼吸器をつけることで命を救うことはできるので、10年くらい寝たきり生活が続くこともありうる。でもそれでは家族の負担ばかりが増えて介護疲れしてしまいます。そこで本人が意思表示できない場合は医師任せにせず、家族や兄弟で尊厳死を考える必要がある。できれば親が元気なうちに決めておくべきでしょう」

そこまで深刻な状態に陥らなくても、親が倒れただけで家族に危機が訪れる。結城先生によれば救急車で運び込まれた大学病院や総合病院は20日程度、長くても1カ月以内に退院させられ、転院先の中小病院で治療を受けながらリハビリを行う場合は毎月総額18万~25万円程度の費用がかかるという。本人が厚生年金を受け取っていれば5万円程度の差額の負担はなんとかなるが、国民年金では差額が15万円程度にもなる。しかも転院先の病院でも3~5カ月以内に再転院を促され、その先が見つからなければ在宅介護になる。共働き夫婦なら片方が仕事を辞めざるをえなくなり、収入は半減するだろう。しかも結局、在宅介護に踏み切るまでの半年間で150万~200万円の費用がかかることを覚悟しておかなければならない。

在宅介護ができないときは介護施設の世話になるのだが、ここでもお金の壁に突き当たる。入居型施設には有料老人ホーム、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)、今後の拡大が期待されているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などがある。