これらは、公務員の年金だけに「職域加算」と呼ばれる税金からの上乗せ給付があるからだ。政府は一昨年、官民の年金一元化を閣議決定したが、もう2年も法制化されないままだ。

また、公務員はあまり辞めない。査定がないので、ノルマや業績のプレッシャーがないのだ。倒産もない。育児休職は3年で、子供が小学生になるまでは時短勤務を選べる。有給休暇も初年度から法定基準の倍である20日。病気になれば3カ月間は給料満額で、3年までは給料の6割をもらいながら休職できる。

公務員給与は、本来「民間給与の相場を参考に決める」とされている。人事院や地方の人事委員会が、該当地の民間企業の給与を調べる。なのに、なぜ、公務員の給与や退職金が異常に高いのか。

前出の北見氏はこう憤る。

「人事院は、従業員50人以上の会社の退職金は3000万円が相場などといっている。まったくナンセンスだ」

からくりはこうだ。人事院の民間給与調査は、「企業規模50人以上かつ事務所規模50人以上」の大企業の事務および技術系正社員に限定されており、中小企業や派遣社員は切り捨てられている。さらに、たとえば、課長職なら、「二係以上または構成員10人以上の課長」に限られている。北見氏の顧客の中小企業では、課長職の持つ部下は平均で6人だという。部下10人以上を持つ「課長」になれる人は一握りだろう。

だが、役所では、誰でも必ず(少なくとも俸給表上は)課長並みの給与がもらえるようになる。部下の人数は関係ない。役所の「課長」はその多くが、部下が一人かゼロの「名ばかり管理職」なのだ。

しかし、もはや地方には公務員の厚遇を賄うゆとりはない。大阪府の橋下知事は、昨年、府職員の基本給を最大で11.5%まで減らすことを決め、年度途中からさっそく実施した。4月に行われる名古屋市長選挙へ立候補している衆院議員の河村たかし氏は、年収500万円を超す市職員の給与を減らす「人件費1割減」をマニフェストに掲げた。

役人側の抵抗は根強い。岡山県では、昨年、石井正弘知事が職員給与を一律9.5%減らそうとしたが、労組などが県職員やその家族など5000人を動員してデモ行進。交渉の末、約7%減に後退した。財政再建団体に転落目前の北海道では、すでに9~7.5%の給与削減を実施しているが、退職手当も減らそうとしたところ、労組の猛反対で取り下げた。