伝統的な産業にも、日本が浮いていたからこそつくれたものがいろいろある。
その一つが、愛媛県今治のタオルだ。
明治27年からタオルをつくり始めた今治の地域では、バブル崩壊後、安価な中国製の輸入タオルが増えたことで、大きな経済的打撃を受けた。特に海外ブランドのライセンス商品をつくっていた会社は次々とつぶれた。
最高級の今治タオルをつくる池内タオルという会社がある。池内タオルもかつてはライセンス品をつくっていて苦境に立たされた。そこから立て直しを図った池内タオルは、タオルの品質を上げることに尽力した。そして、ブランド戦略によって、池内タオルを特別なものに位置づけることに成功したのだ。
吸水性にこれでもかというほどこだわった池内タオルは、今や世界でも人気の一品となっている。1枚1万円もするバスタオルが予約しないと買えないほど人気商品となっている。
これは、他の地域ではよく行われていたブランドものやキャラクターものなど、いわゆるライセンスものタオルをつくるのをやめ、真っ白なタオルに絞って品質を上げたからだろう。
当時は、安価なタオルが外国からどんどん輸入されるなか、どうしてそんな何の変哲もないタオルをつくり続けるのか、ほかからは不思議に思われたに違いない。
しかしそんなことは気にせず己の道を突き進んだら、大成功を収めたのだ。
王道を行くという浮き方で、成功した例である。
※本連載は『おれが浮いてるわけがない。』(五十棲剛史 著)からの抜粋です。