サイバー攻撃の8~9割をAIがこなす
安全装置のあるAIでも安心とは限らない。米Anthropicは2025年11月、中国の国家支援を受けたとみられるグループが「Claude」を悪用し、約30組織への侵入を試み、一部で成功したと公表。攻撃者は依頼を小分けにして安全装置をすり抜け、作業の8~9割をAIに担わせたという。これは特定事例の数字だ。
しかも、AIは人間と違って疲れない。高性能なモデルを少ない計算資源で動かせるようにもなってきた。国家サイバー統括室の飯田陽一・内閣サイバー官は8月、共同通信のインタビューで、先端AIが脆弱性を見つけてから攻撃に移るまでの時間が「従来の何百分の1、何千分の1」に縮まってもおかしくないと危機感を示した。政府は、サイバー攻撃に先手を打つ「能動的サイバー防御」のうち、攻撃元のサーバーにアクセスして無害化する措置に先端AIを活用する検討に入っている。
そして厄介なのが、AIを使った攻撃を止めるのが極めて難しいという点だ。サイバー攻撃はもともと犯罪であり、法律で禁じれば止まるものではない。10月1日からは警察や自衛隊による無害化措置も可能になったが、能動的サイバー防御の主眼は電気・水道などの基幹インフラへの重大な攻撃を防ぐことにある。企業を狙った今回のような情報流出に対処できるかは疑問だ。
自分の身は自分で守るしかない
攻撃者の手元や規制の及ばないサーバーで動くAIを、提供企業が管理するのは難しい。一度公開されたモデルを回収することもできず、資金があれば独自に作ることもできる。
好むと好まざるとにかかわらず、AIを使わない人であっても、その悪用の影響からは逃れられない時代になっているのだ。
被害者がここまで労力を割かなければならないのは理不尽に思えるが、AIによって攻撃のハードルが下がり続けている現状では、企業がデータの持ち方を改めるまでの間、個人も情報収集を欠かさず、自衛能力を高めていく必要がある。
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