親子3代の記憶が重なる、明治の湯船

父と子、祖父と子で法師乃湯につかる。一緒に湯につかりながら交わした何気ない会話こそ、大人になってから思い出す家族の思い出になる。

「『子どもの頃におじいちゃんと入った』という記憶をたどって、親の代になって再訪くださるお客様がいます。『また来ました。変わっていませんね』と言っていただけるのは、宿としても嬉しいことです」と長寿館の岡村直さんは言う。

ただし、法師乃湯は混浴風呂。湯浴み着や水着は着用できないため、父親と娘、母親と息子の混浴には向かないかもしれない。女性は男女別浴槽や「女性専用時間」で入浴する人が多い。

法師乃湯の一角に設けられた源泉槽
筆者撮影
法師乃湯の一角に設けられた源泉槽

源泉温度は41〜42℃程度。源泉はあちこちから湧いているため、浴槽の外で湧いた源泉は写真のような源泉槽に集め、浴槽に加えているそうだ。

「自然のまま湧いている温泉なので、ます目によって温度差があります。ぜひ入り比べてみてください」(岡村さん)

長寿館の正面玄関
筆者撮影
長寿館の正面玄関

創業は明治8(1875)年。

建物は4つの棟が渡り廊下でつながっている。本館、別館、薫山荘は2階建て。法隆殿のみが3階建てで、すべて木造である。温泉の効用のみならず、登録有形文化財の趣ある建物が、時間に追われる現代人の心と体をときほぐしてくれる。

木造の宿でも、部屋選びで階段移動を減らせる

長寿館の紅葉の見頃は例年10月下旬〜11月上旬という案内がされているが、2023年は紅葉の見頃が2週間ほどずれ、11月10日を過ぎても紅葉を楽しむことができた。2024年も11月20日頃がピークだった。時期は読めないため、紅葉に出合えるチャンスも運次第だろうか。

長寿館の「玉城乃湯」。露天風呂で紅葉を楽しめる
写真提供=法師温泉 長寿館
長寿館の「玉城乃湯」。露天風呂で紅葉を楽しめる

2世帯で行く場合は、本館や別館なら2室を確保するか、広い2間続きの客室がある薫山荘を押さえたい。法隆殿(新館)の「まんさく」は、和室とベッドルームのある寝室のほか次の間もあり、2世帯での利用もできる。

なお、バリアフリーについても配慮しながらリニューアルを進めているという。

「完全にバリアフリーではないのですが、段差を少なくした客室が3部屋あります。希望によって食事処への移動以外は、階段の上り下りをしなくてすむ地上階のお部屋をご用意することもできます」(岡村さん)

昔ながらの木造宿でも、「なるべく階段の上り下りをしない滞在」ができるのはありがたい。

法師温泉 長寿館
住所:群馬県利根郡みなかみ町永井650番地
電話:0278-66-0005
客室数:33室
料金:1万9950円〜
立ち寄り入浴:1500円(11時〜13時30分、水曜定休)
アクセス:上越新幹線上毛高原駅からバスで1時間〜1時間10分(猿ヶ京乗り換え)の法師温泉下車、徒歩1分、車なら関越道月夜野ICから約35分


▼ 7項目の評価
・東京駅からの近さ:○
・コストパフォーマンス:○
・部屋食/個室での食事:△
・館内の移動:○
・紅葉の見え方:◎
・温泉の質・使い方:◎
・送迎の有無:×
合計 13点