名画は「足どり」が問われる時代に
「来歴(プロブナンス)」とは、すなわち、美術品が画家のアトリエを出てから現在にいたるまでの「足どり」を指す。近年、ピカソやマティスなどの作品が「ナチスの略奪美術品」として問題となるたびに、正当な所有者は誰なのか、作品の「来歴」が問われるようになった。
もっとも、旧安田火災海上保険が「ひまわり」を落札した1980年代にこういった「来歴」は、ほとんど問題視されなかった。一部の美術関係者の間では認知されていたとはいえ、競売の印象を悪くしないためになかば黙認される傾向が強かったためである。しかし、「ひまわり」の購入当時から時代は大きく変わった。
略奪された美術品に対する姿勢が世界的に転換したのは1990年代以降である。その背景には世界的に大きな政治のうねり、変化があった。共産圏の崩壊とともに一応、「冷戦が終了」したことでそれまで封印されていた文書が旧ソ連で公開され、略奪美術品に関する著書も次々に刊行された。
ショップスなど原告が返還を求めた「ひまわり訴訟」は、その後、イリノイ州の裁判官が「証拠不十分のため本件を却下する」という判決を下した。今後、原告側がどのような法的手段に出るのか、出ないのか、本稿を書いている段階では不明である。
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