911はフル電動にしない

一方で、より高い利益率が見込める上位セグメントへの拡大も図る。

ライターズ氏は2026年3月の記者会見で、「現在の2ドアスポーツカーの上位、そしてカイエンの上位にあたるモデルを検討している」と語り、スーパーカー領域や超高級SUV領域への参入を示唆した。

パワートレインについては、内燃機関・ハイブリッド・フル電動のすべてに引き続き投資する。ただし、看板モデル911の方針は揺るがない。ライターズ氏は、「911にとって、専用開発のパフォーマンスハイブリッド・パワートレインは基本的な構成要素であり、いわば未来への命の水だ。フル電動の911は存在しない」と明言する。かつてのEV重視路線からの、明確な転換だ。

第3の柱「カンパニー&オペレーション」では、組織の階層を減らし、責任の所在をはっきりさせ、やると決めたことへの説明責任を徹底するという。

これらの戦略を貫くのは、「量より質」の思想だ。ライターズ氏は、「顧客が意識的にポルシェを選び、適正な対価を払う。ポルシェの強さはそこから生まれる」と強調。「必要だからではなく、本当に欲しいから買う」とのブランドの立ち位置を明確にし、台数を追う路線からの転換を掲げる。

スポーツカーへの回帰で中国のSUV市場で勝てるか

もっとも、戦略の青写真が示されても、市場の警戒感は根強い。2025年の業績悪化を目の当たりにした投資家やアナリストは、ビジョンが実際に数字となって実現することを求めている。

ロイター通信によると、ポルシェの株主であるDWSのヘンドリック・シュミット氏は、「特に中国での動向が、はっきり示しています。今のままでは、ポルシェのビジネスモデルはもう立ち行かない」と指摘した。

こうした懸念が集まっているのが、EV版のカイエンだ。中国事業の立て直しは、このクルマの成否にかかっていると言っても過言ではない。

ポルシェは長年、中国のプレミアムSUV需要を収益の柱としてきた。だが近年、その構図が崩れつつある。小米(シャオミ)をはじめとする国内ブランドが、先端技術を搭載した低価格SUVで猛烈に攻め込んできたのだ。

小米(シャオミ)のEVセダン「SU7」
小米(シャオミ)のEVセダン「SU7」(写真=S5A-0043/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

こうしたブランドは薄利多売の過当競争を繰り広げている面があり、中国メーカーが一様に有利にビジネスを展開しているとは言い難い。ポルシェとしては、そこに巻き込まれた側面がある。

ドイツの自動車産業アナリスト、フェルディナント・ドゥーデンヘーファー氏は冷ややかだ。ロイターに対し、ライターズ氏の戦略を「再編における典型的なアプローチ」と評したうえで、「中長期的に、この先どこへ向かおうとしているのかが見えてこない」と疑問を投げかけた。

同氏はSUVのカイエンについても、「コストパフォーマンスの面で、中国では確実に試練に直面するだろう」と警告する。スポーツカーへの原点回帰が911の購買層に響くとしても、中国のSUV市場で同じ戦略が通用する保証はどこにもない。