唯一伸びた911、タイカンの約5倍を販売

2026年上半期、ポルシェの世界販売実績は、前年同期比16%減の12万2306台に落ち込んだ。ほぼすべてのモデルが2桁の減少となるなか、たった1種だけ、販売を伸ばしたモデルがある。

ポルシェ伝統のモデルであり、EVではなくガソリンエンジンを搭載する911だ。

販売台数は、前年同期比19%増の3万534台。カー・スクープスは、堅調な需要に加え、GTS、ターボ、GTといった高性能グレードを順次追加した効果が大きいと分析する。マイナスが並ぶ販売実績のなかで、911だけが前年同期を上回っていた。

ポルシェ911カレラGTS
写真提供=ポルシェ
ポルシェ911カレラGTS

911の好調ぶりは、タイカンと比べるといっそう際立つ。

同じポルシェが手がけるEVセダン/スポーツワゴンのタイカンは、上半期の販売が前年同期比25%減の6219台にとどまった。米自動車ニュースサイトのモーター1は、「ポルシェ911がタイカンをほぼ5対1で圧倒(The Porsche 911 Is Crushing The Taycan In Sales, Nearly 5 To 1)」と題して報じている。比較的ニッチな部類のスポーツカーが、量産前提の4ドアEVを台数で上回る、異例の構図だ。

巨額の開発費を投じた次世代の主力車種が軒並み落ち込むなか、発売から60年を超えた911が、いまポルシェの中で重要な位置を占めている。

新CEOが掲げる「自ら運転したい人」への回帰

こうした危機のさなかにポルシェの経営を任されたのが、ミヒャエル・ライターズ氏だ。2026年1月、新CEOに就任した。

米自動車ニュースサイトのオートブログによると、ライターズ氏はかつて、2000年から2013年までポルシェに在籍していた。2026年上半期に販売台数首位だったSUVカイエンや、同2位の小型SUVマカンの開発、さらに初期のハイブリッドプロジェクトに携わった。

その後、フェラーリのCTO(最高技術責任者)としてSF90や296 GTBなどのハイブリッド・ハローカーを世に送り出し、マクラーレン・オートモーティブのCEOを歴任している。ポルシェの車づくりと、超高性能スポーツカーであるハイパーカーの開発の双方を経験した人物が、古巣に復帰した。

前任のオリバー・ブルーメ氏は、フォルクスワーゲン・グループCEOとの兼務だった。対してライターズ氏は、ポルシェ専任。その動き出しは早かった。就任からわずか2カ月余りの3月には、2035年を見据えた中長期戦略「戦略2035」の骨子を示した。

6月の株主総会では、3つの柱を正式に掲げた。第1の柱「ブランド&カスタマー」は、スポーツカーとしての本質への回帰だ。ポルシェの公式発表でライターズ氏は、「自動化が進む世界で、ポルシェは自ら運転したい人のためのブランドであり続ける」と宣言している。自動運転やソフトウェアの快適性で攻める中国勢とは、明確に一線を画す。

第2の柱「プロダクト&テクノロジー」では、広がりすぎた製品ラインの絞り込みに踏み切る。アメリカではすでに、電気自動車であるタイカンについて、車体形状を変えた2つの派生モデルを廃止した。