最大市場だった中国で販売が半分以下に

販売台数の急落は、中国から始まった。

かつて中国は、ポルシェにとって世界最大の市場だった。ロイター通信によると、2021年には中国で10万台近くを販売していた。その中国で、今や最も深刻な販売不振に陥っている。

米自動車メディアのカー・スクープスによると、2025年の販売台数は前年比26%減の4万1938台。ピークからわずか4年で、半数を割った。

最新の2026年上半期になると、減少はさらに加速した。ポルシェの発表によると、中国での販売台数は前年同期比32%減の1万4501台に落ち込んでいる。

販売の落ち込みに伴い、ディーラー網も縮小の兆しがある。肝心の顧客との接点が失われている悪循環だ。

カー・スクープスによると、ポルシェ・チャイナのアレクサンダー・ポリッヒCEOはコスト削減のため、2024年末に約150あったディーラーを2025年末に114店、2026年には約80店まで削減する方針を打ち出した。2024年末の水準からほぼ半減させる計画だ。

実際、2025年末には複数のディーラーが営業を停止した。加盟店の撤退に伴い、顧客が預けていた手付金の扱いをポルシェ・チャイナが引き受ける混乱も生じている。

販売不振について、ポルシェ自身は中国市場全体の低迷を理由に挙げている。同時に、1台あたりの販売価格を優先する「価値重視の販売戦略」の結果でもあると説明している。価格水準とブランドの希少性を維持するためだというが、ディーラー数の減少など、顧客にとっては不安な状況が続く。

高級車市場に食い込むファーウェイ

欧州資本が中国資本に押される構図は、実はポルシェにとどまらない。ドイツ高級車3ブランドのBMW、メルセデス、アウディも、中国でシェアを落とし続けている。

代わりに主役に躍り出たのが、通信機器大手のファーウェイ(華為技術)だ。同社が安徽江淮汽車(JAC)と共同開発した超高級セダン「Maextro(マエストロ)S800」は、2025年5月の発売後、販売台数を伸ばし続けている。同年9月には価格10万ドル(約1570万円)以上の全車種を抜き去り、首位に立った。

中国広東省深セン市宝安区で撮影された「尊界S800」
中国広東省深セン市宝安区で撮影された「Maextro(マエストロ)S800」(写真=User3204/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

中国自動車情報サイトのカーニュース・チャイナによると、同年12月の月間販売台数は4376台。ポルシェのパナメーラが1593台、これにBMW 7シリーズとマイバッハSクラスを合わせた3車種の合計でも4140台だから、欧州勢が束になってもかなわない。

ファーウェイは自ら車をつくらない。運転支援ソフトウェアなどの先端技術と広範な販売ネットワークを提供し、車両の製造はJACが合肥市の工場で担う分業モデルだと、ブルームバーグは説明する。

最低価格は70万8000元(約1660万円)からの設定で、最上位モデルでも約102万元(2400万円)。パナメーラの中国最低価格110万元(約2580万円)を大きく下回る。それでいて、680本以上の光ファイバーで夜空を再現した星空天井、後席の40インチプロジェクターと、先端装備をふんだんに搭載している。

こうした超高級セグメントは従来、外資勢にとって最後の砦のひとつだった。欧州ブランドのエンブレムがそのままステータスに直結し、BYDの仰望(ヤンワン)など中国メーカーが挑んでも崩せなかった。だが、ブルームバーグは、この牙城をファーウェイが初めて攻略したと指摘する。

コンサルティング会社・智能汽車の創業者である朱玉龍氏は、ブルームバーグの取材に対し、「中国の消費者の需要が変わり、国産ブランドへの誇りが高まったことが、高級車市場を根底から覆した」との見方を示した。