なりふり構っていられない現実

今までマツダは「2%戦略」という言葉を使ってブランド戦略を構築してきた。98%の人には買ってもらわなくても良いから、2%の熱烈なファンに支えられれば良いという考え方だ。

これはBMWとも共通する考え方で、車の個性・特性をすべてのモデルで統一・明確化して、価格が多少高くても、モデル末期であってもマツダを積極的に買ってくれるファン層を形成しようとするものだ。

スカイアクティブテクノロジーや魂動デザイン、乗り心地より操縦性を重視したサスペンションなどはそれを意図したもので、その戦略はある程度成功を収めていた。

しかし今回はなりふり構っていられないのである。現状の新型CX-5ではコアなマツダファンには少々物足りない内容である以上、販売ターゲットを従来のマツダファン以外にも拡大せざるを得ないのだ。

だから大きく拡大された後席空間やトランクルームを重要なセールスポイントに据えざるを得ない。サスペンションも乗り心地を重視したチューニングとせざるを得なかった。

「価格」「広告」に起きた大変化

そして、非常に大きな変化が値付けである。

マツダは装備が充実しているにもかかわらず、新型CX-5を競合車に対してとても「お買い得感」のある価格としてきたのだ。競合他車はハイブリッドが主力のものが多いが、通常のガソリン車を選ぶ層は価格を重視して選ぶ層なので、割安な価格とせざるを得なかったのだ。これは今までのプレミアム化路線に逆行するものである。

さらにもう1つ、大きな変化がコミュニケーションである。

スカイアクティブ技術や魂動デザインを採用した初代CX-5以降、マツダは車自体のコンセプトやデザインの素晴らしさにフォーカスしたコミュニケーションを展開してきた。つまり広告にタレントなど車と直接関係のない要素はあえて排除してきたのである。

しかし今回の新型CX-5キャンペーンでは女優の綾瀬はるかを起用したのだ。綾瀬はるかはユニクロやP&Gなどでも起用されており、老若男女に支持されるもっとも好感度の高い女優の一人だ。これは従来のマツダユーザー以外から幅広く顧客を取りたいという意図からのものだろう。

この狙いはとりあえず成功しており、マツダディーラーに話を聞いたところ販売は好調でマツダ車以外からの買い替え、特にトヨタとホンダからの買い替えが目立つという。購入の決め手はトヨタやホンダの競合車と比べ割安な価格ということだ。