「変な絵だよなあ」。国宝指定されている水墨画『瓢鮎図ひょうねんず』を前に、祖父は私にそう語りかけました。松山さんと知り合ったのは、それから半世紀近く経った2015年のこと。「あのナマズの絵がある場所ですか!」と、少年時代の記憶が一挙に呼び起こされました。

エアウィーヴ会長兼社長 高岡本州×妙心寺退藏院副住職 松山大耕
京都府京都市の妙心寺退藏院にて。

当時10歳だった私をここ、退藏院に連れてきた母方の祖父は、臨済宗妙心寺派の青龍山真寶寺しんぽうじで住職を務めていました。「縁のある退藏院に、家族で訪問させていただけないか」。松山さんにお願いしたところ、快く迎えていただきました。母も大喜びで、素晴らしい親孝行になりました。

今では毎年桜の季節に、お付き合いのある方々をお誘いして退藏院を訪れ、松山さんのお話を伺っています。仏教の知識はもちろん、様々な分野の知見が生かされた松山さんの講話は抜群に面白い。一度お聴きになった方々はみな口を揃えて、「来年もまた来たい」と大ファンになっています。

ビジネスの世界に生きていると、どうしても人間の様々な一面と向き合う瞬間が多くなります。日々、世の流れに翻弄され、競争の只中で心がささくれ立つこともしばしばです。松山さんの講話を伺う時間は、仕事から離れた静かな空間で一息つき、自分を見つめ直すいい機会になっています。

祖父と見たナマズの絵の前で松山さんと座っていると、先人から続く縁に思いを馳せずにいられません。ご縁を繋ぎ、社会のお役に立つこと。ビジネスも宗教も、そこは同じかもしれません。(高岡)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年8月29日号)の一部を再編集したものです。

(構成=加藤圭悟(本誌編集部) 撮影=牛久保賢二)

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