知らずにぶつけた本人もデータを見れば納得する
大木は「ドラレコを付けるのはいいことです」と言った後で、しかし、1台の車に3つは多いのではないかと言った。
「ドラレコをダブル、トリプルで付けている方がいらっしゃいます。加えて駐車監視システムまで取り付けると、バッテリーの容量が足りなくなってしまう。ドラレコを複数取り付けるより、コネクティッドカー向けテレマティクス保険と組み合わせるといいでしょう。もちろん、ドラレコ型のテレマティクス保険もあります。ただ、私は運転挙動がデータで飛ぶタイプを勧めています。コネクティッドカー、もしくは簡易車載器のタイプです。
お客さまは免許を取ってから、自分自身の安全運転を客観的に判断しないまま、ずっと車に乗ってきたと思うんです。車に対してのブレーキの踏み方、踏むタイミング、急ハンドルなど……。なんとなく自分でいいと思って運転してきた。みんな、そうだと思うんです。それが、テレマティクス保険に入ると、自分の運転の仕方をもう一度、見直すわけです。運転の仕方が保険会社にデータとして送られて、安全運転スコアという点数になる。しかもスマホで見られる。
テレマティクス保険はどんな時に役立つのか?
そうすると点数によって割引になり、保険料が毎月安くなったりします。とにかく一度、自分の運転の仕方を見直すことが重要だと思っているんです。そういう保険って、これまではなかったんです」
本書の取材ではさまざまな人たちにテレマティクス保険についての説明を聞いた。わたしが聞いた限りでは開発者の梅田教授を除けば、もっともわかりやすく伝えてくれたのが大木だった。
なぜ、彼の伝え方が上手なのか?
本人曰く「毎日、お客さまに説明していたから」。毎日、説明しているうちに、どんな話をすればいいかがわかってきたのだという。大木はわたしに、これまでにお客さまが反応した部分を集中的に説明したのである。
大木によれば、テレマティクス保険について、顧客が尋ねてくるポイントはふたつだという。
②どういう種類の事故があった場合、テレマティクス保険が役に立つのか?
そこで大木が話すのが「テレマティクス保険でこそカバーできる事故」についてである。彼はこう話す。
ドラレコの死角を突いたケース
「こんな事故がありました。あるお客さまの車が自転車販売店の前で時速3kmで走っていました。時速3kmですから歩くより遅い。止まる寸前のスピードです。すると、自転車店の従業員が自転車を搬入中に誤って倒してしまい、車の側面にぶつかりました。ボディはへこんだから直さなくてはならない。こういったケースの場合、運転挙動やスピードのデータがなければ、『車だって悪いじゃないか。車のへこみはドライバーが自分で直せ』となってしまいます。車の側面ですから、ドライブレコーダーにも映っていないわけです。
ところが、テレマティクス保険に入っていれば時速は3kmで、横からぶつけられたというデータが残っているわけです。
結局、このケースの事故ではお客さまの過失割合はゼロでした。自転車が100で、車はゼロ。車はまったく悪くなかった。自転車屋さんから車を修理するお金をもらうことができたのです。
もし、あいおいニッセイ同和損保さんのテレマティクス保険のデータがなかったら、自転車でぶつかってきた人と争いになります。ドライブレコーダーは前と後ろしか映らないから、証拠にならない。お客さまのスピードが時速3kmというのも数値でわかります。止まっている車にぶつかったのと同じなんです」
