② なぜ、「自分は玄人である」と思い込んでいる売り手ほど判断にズレが生じやすいのか
一般的に、経験豊富でその道の“プロ”や“玄人”といわれる人ほど的確な判断ができると思われがちだが、鈴木氏は必ずしもそうではないという。
〈鈴木語録〉
「自分は玄人である」と思い込んでいる人の問題点は、自分の先入観を裏づける情報ばかりを見つけようとして、状況の変化を示す新しい情報がもたらされても、「うちは違う」といって、都合の悪い話は聞こうとしないことです。
その結果、顧客の生活感覚や日常感覚からズレてしまうのです。
セブン‐イレブンの店舗では、素人である学生のアルバイトも商品の発注を任され、「仮説・検証」を行い、単品管理を実行していく。そのため、経営学者の間では、「セブンでバイトすると3カ月で経営学を語るようになる」ともいわれた。鈴木氏は何より「素人の発想」を重視した。
〈鈴木語録〉
過去の経験や既存の常識に染まっていない純粋さ、それが素人の強さです。
前例にとらわれない素人のような発想ができるか。素人的な発想を軽視せずに耳を傾けることができるか。
顧客のニーズの変化をつかむには、生活感覚を持った素人の感覚のほうが重要であるという発想こそが必要です。
「お客様のために」と「お客様の立場で」は違う
③ なぜ、スタッフには「標語」よりも「話し言葉」で言い換えた方が伝わるのか
鈴木氏は、「顧客の立場で」考える顧客起点の発想を何より重視した。しかし、「顧客第一主義」「顧客満足度経営」といった類いの標語は、スタッフにとって「右の耳から左の耳へ抜け、何も残らない」として使わなかった。
〈鈴木語録〉
たとえば、「顧客第一主義」のような標語は、相手に理解されるかどうかより、掲げることが目的で、「あとは勝手に理解しろ」といった感じです。
重要なのはみんなに理解させることです。それには標語の意味を示さなくてはなりません。
私なら、「顧客第一主義とは常にお客様の立場で考えることだ」といい換え、こう伝えます。
顧客第一主義とは「お客様のために」と考えることだと思うだろうが、「お客様のために」といいつつ、売り手の立場で考えていることが多い。
大切なのは「お客様の立場で」考え、売り手にとって不都合なことでも、お客様にとって好都合で満足につながれば、それを実行することだ。
これが本当の解説です。
④ なぜ、「一見不可能に見える目標」が重要なのか
セブン‐イレブンで重点商品のキャンペーンが始まると、意欲的な店舗では、「シュークリームの販売数300個」「フランクフルト1000本」……といったケタ違いに高い「一見不可能に見える目標」を掲げる。鈴木氏は、本部の社員たちに対しても、「一見不可能に見える目標」を設定させることが多かった。そのねらいをこう語った。
〈鈴木語録〉
これまで以上に高い目標は、過去の経験の延長線上では達成できません。困難な目標をあえて設定するのは、今までのやり方を見直し、新しい仕事の発想を模索させるためです。
このとき過去の経験の呪縛から離れ、自分本来の感性や好奇心を存分に発揮して、自由に考えれば、さまざまな制約条件が排除されていきます。
リーダーは高い目標を設定することでメンバーの潜在能力を引き出し、殻を破らせる。メンバーは挑戦する力をつけ、成長していく。チーム力はどんどん高まっていくでしょう。

