消費が爆発する「ドミナント戦略」

② なぜ、セブンは「ドミナント戦略」をとるのか

ドミナント戦略とは、一定エリア内に集中出店する戦略のこと。他の大手チェーンが早くから日本全国に出店したのに対し、セブン‐イレブンはドミナント戦略に徹したため、最後に沖縄に進出して全都道府県への出店が完了したのは、1号店から45年後のことだった。

このドミナント戦略も鈴木氏の経営判断によるものだった。セブン‐イレブンのドミナント戦略には主に2つの効果がある。

1つはサプライチェーンの面でのメリットだ。ドミナントであれば、弁当メーカーが店舗の近くにセブン‐イレブン専用工場を設置しても経営が成り立つ。その結果、セブン‐イレブンの専用工場率は90%を超え、他チェーンと圧倒的な開きがある。

店舗近くに専用工場があれば、必要な商品が、必要なときに、必要なだけ鮮度の高い状態で供給できるようになる。

もう1つが顧客の心理面での効果だ。1つの商圏でセブン‐イレブンの店舗密度が一定以上になると、商圏内の店舗の日販が急速に伸びていくようになる。ある連続的な変化が一定レベルまで積み上がると、それがもたらす変化が一段上のフェーズへと移っていく。この変化のポイントを鈴木氏は「爆発点」と呼んだ。

〈鈴木語録〉
ポイントは顧客のセブン‐イレブンに対する認知度です。セブン‐イレブンが新しい地域に出店し、その地域での店舗数が増え、店舗密度が一定レベルに達すると、顧客の認知度がにわかに高まっていきます。

すると、心理的な距離感が一気に縮まって、日販カーブが急速に立ち上がるようになる。これが爆発点です。

セブン‐イレブンがドミナント戦略を続けたのはそのためです。

実際、セブン‐イレブンのある都市圏での出店が他チェーンに遅れ、最後発になっても、ドミナント戦略を進めた結果、セブン‐イレブンの平均日販がその都市圏で1位になっていったケースは数多い。

③ なぜ、アジフライ100枚が軽く売れるのか

鈴木氏は、爆発点理論を商品の販売方法にも適用していった。たとえば、棚に並べる商品のフェイス(陳列面)を一定以上広くとると、顧客は手を伸ばすようになる。鈴木氏はこんな例を挙げて説明した。

アジフライが100枚並んだ売り場と20枚並んだ売り場、どちらが早く売り切れるか。

アジフライ
写真=iStock.com/KPS
※写真はイメージです

20枚のほうが早いように思えるが、100枚のほうが早い。広いフェイスをとれば100枚は軽く売れるアジフライも、人気があるからフェイスが少なくても売れるだろうと思うと、20枚も売れない。その理由はこうだ。

〈鈴木語録〉
広いフェイスをとって並べると、その商品に対する顧客の認知度は大きく高まり、爆発点に達します。

顧客は、「こんなに広くフェイスをとって並んでいるのだからおいしいに違いない」「ほかのお客も買っていそうだから自分も買ってみよう」と「選ぶ理由」を直感して手を伸ばすようになる。

もの余りの買い手市場の時代に大切なのは、顧客に対し、その商品を「選ぶ理由」や「納得して買う理由」、つまり、「買うことを正当化できる理由」を示すことです。