女性役員4割で失敗したノルウェー

女性役員比率を高める政策を考えるうえで、非常に興味深い社会実験がノルウェーで行われました。同国では2003年に上場企業と一定の要件を満たした非上場企業を対象に割当制を導入し、当初6%だった女性役員比率を08年に40%まで引き上げたのです。

その結果を分析した米南カリフォルニア大学のケネス・アハーン助教と米ミシガン大学のエイミー・ディットマー准教授の研究によると、割当制の内容が公表されたとき、対象企業の株価は大幅に下落し、その後数年間で企業価値の指標である「トービンのq(時価総額÷資本再取得価額)」は10%の女性役員比率増加で12.4%低下しました。

さらに企業が制度の対象となるのを避けた結果、09年の上場企業数は01年の7割弱となる一方、割当制の要件を満たさない非上場企業の数は30%増えました。ノルウェーは国際的に男女間格差が小さい国として知られていますが、それでも女性役員比率を40%に高めることは企業にとって相当な重荷だったのです。

なぜ、この政策はうまくいかなかったのか。米ノースウエスタン大学のデービッド・マーツァ准教授と米バージニア大学のアマリア・ミラー准教授は割当制の影響を受けた企業と受けなかった企業を比較し、女性役員比率が高い企業は雇用削減を避ける傾向があり、相対的に労働コストや雇用水準は高まり短期的な利益が低下したと指摘しています。こうした効果は以前に女性役員がいなかった企業ほど顕著であった、とも。

ノルウェーの社会実験が示しているのは、無理なことをするとどうしてもひずみが出てしまうということでしょう。女性役員比率を本気で高めるなら阻害要因を丁寧に除去し、自然に増えていくような環境をつくる必要があります。