「平等」の行きついた先

日本の会社もグローバルスタンダードに合わせなくてはならなくなって、正社員と非正規の区別はなくなり、交通費は支給されず、福利厚生の類もすべて廃止された。公共交通機関の運賃も相次いで値上げされたので、会社まで歩けるところに泊まって、すこしでも節約することにしている。

日本社会もどんどんリベラルになり、定年制は年齢差別だとして違法とされ、大学卒業時の新卒一括採用もなくなった。

望めば何歳まででも働くことができるが、会社と合意した成績を上げられなければ簡単に解雇される。その代わり平均以上の収入を得ているのだから、この変化を受け入れるしかない。

多言語が飛び交う「ネオ・丸の内」

日本橋を渡って丸の内に向かう。人手不足で警備をする警察官が足りなくなり、空にはドローンが舞っている。

オフィス街の雰囲気もずいぶん変わった。ジョギングウェア姿はほとんどが外国人で、このあたりの10億円を超えるタワマンに住んでいる。会話も英語か中国語がほとんどで、たまに日本語が聞こえると、思わず立ち止まって相手の顔を確認してしまう。

東京はニューヨーク、ロンドン、パリと並ぶ人気都市ランキングの常連で、日本食レストランと治安のよさで世界中の富裕層を引きつけている。だがそこで働く日本の若者は、足立区あたりの安アパートから自転車で通うか、黒木のように近くのネットカフェで暮らしている。

AI(人工知能)がホワイトカラーのデスクワークのほとんどを代替するようになり、仕事は看護・介護や接客業などの“エッセンシャルワーク”だけになった。黒木のように、高級ホテルで海外の富裕層の世話をして、高額のチップをもらえる仕事は恵まれているのだろう。

最初に聞いたときは自虐ネタかと思ったが、「日本人に生まれてよかった」というのもわかる気がする。