恐れていた変異体の出現

かつてのウリミバエ根絶事業でも、「不妊オスを避けるメス」の変異体が出現した可能性を示す研究結果があった(*7)

ウリミバエの折には、根絶作戦に仕事人生を懸けた多くの研究者や技術者が、強いリーダーシップのもと大量飼育法や不妊化のための技術開発、ミバエの野外での生態や行動の基礎的な研究を行った(*5)

当時は根絶のための事業を行うミバエ対策事業所(現:病害虫防除技術センター)と、基礎的な研究を担う国の指定試験地であるミバエ研究室(沖縄県農業試験場内に配置されていた)の研究員、そして行政担当者が両輪となって、根絶に向かって全力でエネルギーを傾けた。

国の都合によって、指定試験地が廃止された今、セグロウリミバエについては、生態や行動について腰を据えて調べる研究組織すらない。基礎研究そのものが圧倒的に不足している。

終わりの見えない検査と駆除の毎日。現場の疲労はピークだ
筆者撮影
終わりの見えない検査と駆除の毎日。現場の疲労はピークだ

気温の上昇とともに増える害虫

そして野外のミバエの数は、今年の春になり、気温の上昇とともにさらに増え続けている。

沖縄県のスタッフは、いま、総出でみな毎日、那覇にあるハエ工場でセグロウリミバエを大量に増殖しては、ヘリコプターに積み込み、発生の多い地域で野生虫と戦う不妊虫を必死で撒き続けている。

そのかたわら、昼夜も惜しまず、セグロウリミバエの行動や生態の基礎研究も行っている。現場から聞こえてくるのは、とにかく腰を据えて、防除と研究に取り組める人員も時間も圧倒的に足りない、という切実な声だ。

繰り返すが、戦っている相手は新たに日本に上陸した生物であり、生物は変異し続ける存在である。

つまり日本は、「よく知らない相手」と、「先の読めない戦争」をしているのである。