殲滅を狙った「作戦」

政府と沖縄県は、侵入初期に徹底防除を試みた。

近縁種のウリミバエのオスを誘引する「キュールア」という誘引剤に農薬を混ぜ、約4センチ四方の板に染み込ませて大量に散布して、セグロウリミバエの拡散を最小限にとどめようと、夏の暑さとも戦いながら、日々発生現場を駆けまわった。中には熱中症で具合の悪くなった者も大勢いた。

そのほかにも現場の職員たちは、発生地域周辺の寄主植物の徹底除去、農薬散布、メスを誘引するタンパク質に農薬を混ぜた薬剤の投入、トラップ調査など、考えられる対策を駆使した「総力戦」が行われたのである。

農家の皆さんも、収穫間近の果菜類をやむなく破棄し、畑に残った残渣の果物を暑い中せっせと処分した。大変な労力をかけて国と自治体に協力したのだ。

家庭菜園では、ゴーヤーやヘチマを育てるのを毎年、楽しみとしているオジーやオバーも涙をのんで、栽培を自粛した。日光が強すぎて夏場に葉野菜の作れない沖縄では、夏場のビタミン補給にウリ類の自給は欠かせない。これはいわば風習である。「ミバエ根絶の時までならば」と、その風習すら我慢した。

関係者の間では、「2~3年で根絶できる」という期待もあった。当時の試みについては以下の記事を参照してほしい(「一刻の猶予もない」ゴーヤー、フルーツは沖縄県外へ"持ち出し不可"に…特殊害虫を絶滅させる驚きの方法)。

セグロウリミバエ
筆者撮影
セグロウリミバエ

結果は「惨敗」

しかし――結果は惨敗だった。初動防除は失敗に終わったと言わざるを得ない。

2025年夏には、那覇市を含む南部地域でも大量に確認されるようになり、沖縄本島全域と周辺離島へ拡大。国はやむなく2027年3月まで緊急防除の延長を決めた。

さらに、あろうことか奄美群島へもセグロウリミバエは侵入した。データは未公開だがDNA解析の結果、ミバエは沖縄本島から北上したこともわかっている。与論島、沖永良部島、徳之島では、すでに“蔓延状態”に近い(*3)

2026年の4月までに奄美以南の鹿児島県に仕掛けた罠につかまったセグロウリミバエの数は1627匹にのぼっている(*4)

つまり、日本は「侵入阻止」に失敗し、「封じ込め」にも苦戦しているのである。