日本人にベタベタ耳垢の人は少ない
なお、「私の耳垢は湿っているから掃除しないと」と訴える患者さんは大勢います。ところが、実際に診察すると、本来の耳垢はカサカサの乾性なのに、耳掃除をしすぎたせいで滲出液が出て「湿った状態」になっていることが少なくありません。
擦っても取れないベタベタした耳垢の正体は、しばしば「かさぶた」です。かさぶたを剥がす、また傷ができる、治癒のための滲出液が出る、また「湿っている」と感じてさらに掃除する――このループから抜けられなくなるケースを本当によく診ます。
「カサカサ(乾性)」か「ベタベタ(湿性)」かという耳垢タイプは遺伝で決まります。欧米は、ほとんどの人が湿性。でも、日本人の8〜9割は乾性で、1〜2割が湿性です。つまり、みなさんの8〜9割は乾性です。「自分は湿っているから違う」と感じる前に、本当に体質なのか、それとも触りすぎた結果なのか、いったん疑ってみる必要があります。
なお、季節を問わず慢性的に耳がかゆい、ジュクジュクするという場合は別問題です。「アトピー性皮膚炎」、イヤホンによる「接触性皮膚炎」、加齢に伴う「脂漏性湿疹」など、皮膚疾患が耳に出ているケースが少なくありません。年中かゆい場合は、迷わず耳鼻科か皮膚科を受診してください。
今からできる「耳の正しいケア3原則」
では、耳を正しくケアするにはどうしたらいいでしょうか。以下の3つだけ覚えておいてください。
①耳掃除の頻度を減らす
毎日はNGです。お風呂上がりに綿棒で耳を拭く習慣がある方は、まずそれをやめましょう。できれば月に1回以下、究極的には「気になったときだけ」で十分です。
②耳掃除で皮膚に触れない
耳掃除をするなら、ポロッと取れる分だけ取る。ゴシゴシと擦ってまで取らない。皮膚に触らない。硬い金属製の耳かきは、それ自体が刺激源になります。使うなら竹製や先が丸いタイプを、ごく軽く当てる程度にとどめてください。
③耳垢が詰まったら耳鼻科へ
耳垢が詰まったら、耳鼻科を受診しましょう。耳垢栓塞除去は保険診療で受けられて、数分ですっきりします。「耳鼻科に行くなんて大げさ」と感じる人も多いようですが、気軽に受診して大丈夫です。
また、耳が一時的にかゆい場合は、触らずにやり過ごすのが鉄則です。どうしても気になるときは、ワセリンを耳の入口にごく薄く塗るのが一つの選択肢。奥は触ってほしくないので無理に塗らず、治らないようなら耳鼻科を受診しましょう。
最後に、ご自身が耳掃除に綿棒を使っていなくても、配偶者やお子さんが頻繁に使っているケースも多いはずです。ご家族の習慣も、ぜひ一度見直してみてください。

