このとき最も大切なのは、商品のコンセプトやスケジュールを関係者全員で共有するためのしくみをつくることです。

たとえば企画書1つとっても、私は文字ではなく絵が中心の視覚的な資料をつくってきました。誰もが一見して理解できるよう、グラフやチャートで図示した資料です。文章で表現しようとすると、文字を細かく追う必要がありますし、人によっては読み飛ばす個所が出てきたり受け取り方にニュアンスの差も生まれてくるでしょう。そうなると、メンバーの意識を揃えるのに時間がかかってしまいます。その点、絵や図解だと、誰もが感覚的に理解できますし、認識にズレがなくなるのです。

開発時代に実行してきたこの方法は、私が社長になって以降、いまでは全社的に浸透しつつあります。各部署から私の手元に上がってくる資料も、そういう視覚的なものに変わってきています。

社員と「大部屋」で仕事をする理由

会社の手帳(右)を使っていた時期もあったが、現在はB6のフォルテ10を使う。筆記具はパイロットの太いボールペン。

スケジュール帳だけでなく、私は仕事部屋も多くの社員と共有しています。社長室や役員室ではなく、企画部門と一緒の「大部屋」で仕事をしているのです。

私のデスクの前には20~30人のスタッフがいます。毎朝8時から定例会議をしますし、私が電話で話す内容も部屋にいる全員がきちんと聞いています。あるテーマについて私が話していれば、担当者が必死でメモを取ります。私は全員に聞こえるようにどんどん話し、大部屋の中ですべて共有するようにしているのです。

この部屋で話し合いながら企画を立てたり資料をつくったりするときも、私は手帳に書き込むのと同じ太さの赤いボールペンで「こう直そう」「こうしよう」と、その場でどんどん決めて資料に書き込み、意見を共有していきます。太字のほうが気合も入りますよね。何週間かに1本はインクを使い果たすほどたくさん書き込むので、秘書が常に替え芯を用意してくれているほどです。