日本の選挙が「大統領制化」している

「この人(私)に、国を任せられるかどうか」

高市首相は衆院解散の大義をこのように語った。

今回の選挙をめぐり、海外メディアが強い既視感を覚えている理由は、ここにある。

日本は大統領制ではない。にもかかわらず、選挙の焦点が「一人の人物への信任投票の様相」を見せているからだ。

ロイター通信は、高市氏自身が今回の選挙を、財政拡大や中国の軍事力拡大に対抗する防衛力強化を含む、自身の指導力と政策を問う「事実上の国民投票」と位置づけていることを伝えた。

「日本という国の運営を、高市早苗に任せられるのかどうか。国民の皆さんに直接、判断してもらいたい」という発言である。

これについて、上智大学の中野晃一教授は、「かなり大統領制的なやり方だ」と指摘する。

この変化を端的に示しているのが、「sanakatsu(サナ活)」現象である。それは政策支持でも、イデオロギー支持でもない。日本で初めて本格的に可視化された、「推し活」型の政治参加だ。

ロイターの記事には、若い有権者の声も紹介されている。

「話し方がはっきりしている」「決断力がある」「前向きなエネルギーがある」

キャッチーな「円安ホクホク」発言の狙い

こうした「人格投票」を後押ししている要素として、海外メディアが注目しているのが、高市氏の外交や経済をめぐる、あえて強い言葉を用いた発言だ。

ロイターは別の記事で、中国や台湾問題に関する踏み込んだ安全保障発言や、「円安ホクホク」といった表現に言及している。

こうした即興的でわかりやすい言葉は、政策を説明するものというより、「この人物は決断する」「迷わない」という感覚を有権者に与える、政治的シグナルとして機能する。特に若年層にとって、そのわかりやすさは強い訴求力を持つ。

英紙『The Times』も、同じ現象を別の角度から描いている。

2月5日付の記事は、「選挙に勝つ方法:はっきり話せ、だが何も言うな」と題し、高市氏のキャンペーンを分析した。

記事によれば、支持者たちは「話し方が明確」「身近な感じ」「バッグやペン、スキンケアが好き」といったように、彼女がどう感じられる存在かについては饒舌に語る。一方で、彼女が何を目指し、どこへ国を導こうとしているのかは、必ずしも明確ではないと指摘する。ここで描かれるのは、感情や親近感を共有しているかどうかを確かめ合う選挙の姿だ。

問題は、これが若者に限られた現象ではなく、選挙の判断基準そのものを変えつつある空気として、日本社会全体に広がり始めている点にある。

筆者はここで強烈な既視感に襲われた。

2024年のアメリカ大統領選で取材した若いトランプ支持者らは、「トランプは面白いから好き」「彼なら経済をよくしてくれる」「これはアメリカの革命だ」と力を込めて語ってくれた。しかし具体的な政策に言及する者は1人もいなかった。

その先に何が起きたのかを、アメリカはすでに知っている。