夫婦特有のリスクには注意が必要
ここまで自営業者の強みを見てきたが、ひとつだけ、会社員以上に警戒しなければならないリスクがある。それは、夫婦のどちらかが先に亡くなってしまった場合だ。
会社員の夫が亡くなれば、妻には遺族厚生年金が支給される。しかし自営業者の場合、18歳未満の子がいなければ遺族基礎年金は支給されない(寡婦年金が受け取れるケースはある)。つまり夫が亡くなった瞬間、世帯の年金収入(約14万円)はいきなり半減(約7万円)してしまう。
一方で、生活費は半分にはならない。住居の維持費や光熱費の基本料金は変わらないため、ひとりになっても生活費は2人暮らし時代の6~7割(約9万円)程度かかってしまうのが一般的だ。収入は7万円、支出は9万円では、毎月2万円の赤字が続くことになる。
2人揃っていれば強い自営業夫婦も、ひとりになった途端に脆くなる。この落差は、国民年金世帯ならではのリスクといえるだろう。
夫の死で顕在化したリスク
では、実際に夫の急死というリスクに直面し、そこから生活を立て直したある妻の実例を見てみよう。筆者は資産運用についての相談を受けたのみだったが、その際に聞いた話が非常に印象的だった。
Cさん夫婦(ともに60代前半)は地方都市の郊外で小さなパスタ店を営んでいた。2人が30代のとき、車でのアクセスがいい郊外エリアに店舗兼住宅を建てて開業。店は繁盛し、景気のよいタイミングで開業時に借りたお金も完済できた。その後、店の売り上げは落ちたものの黒字はキープできており、返済もないため、事業を問題なく続けていた。
ところが妻のCさんが65歳になる前に、夫が急死した。悲しみに暮れるCさんに「自分だけでは店を続けられない」という現実が突きつけられた。Cさんにとって店の廃業は、収入が途絶えることを意味する。国民年金の遺族基礎年金は、18歳未満の子がいる場合しか支給されないが、もともとCさん夫婦に子どもはいない。Cさんに残されたのは300万円ほどの貯金と、65歳になれば受け取れる月額6万円程度の自分の国民年金だけだった。年金を繰り上げて受け取る選択肢もあるが、減額された年金を一生涯受け取ることになってしまう。

