紛失防止タグで母が通っている場所を突き止める

私たちは、これは何かおかしいと思い、母のバッグにつけた紛失防止タグの位置情報を調べてみることに。スマホのアプリで母が頻繁に訪れていた場所を突き止め調べてみると、どうやら高齢者狙いの催眠商法が行われている店であるらしいことがわかりました。

ある日突然、空き店舗に店ができ、近所にお店のオープンのチラシが配られ、毎日3~4回の説明会が開催され、行くと日替わりで無料のお菓子やジュースなどが配られる仕組みのようです。最初は無料だけど、そのうち何十万、何百万というサプリや寝具、さまざまな物を買わされて預金を使い果たした……という口コミをたくさん目にしました。

そして、スマートスピーカーで話している時に、偶然ご近所のお友達がその店に行こうと母を誘いに来たことで、母が誰とその店に行っているのかを知りました。

それから母が展示会に行くタイミングを紛失防止タグの位置情報で確認して、FaceTimeをすると、母は少し気まずそうな表情に。「すぐ家に帰るように」と母に伝え、それを何度か繰り返しているうちにその店には行かなくなりました。

玄関を出る高齢者
写真=iStock.com/Hanafujikan
※写真はイメージです

高齢者の心理をついた商法

倹約家の母が「いいお布団なんだって」と口にするようになっていたことが、私たちには信じられませんでした。何十万もする寝具はとてもお得だと巧みな店員の言葉にすっかり洗脳されていました。日頃、おしゃべりする機会が少ない高齢者は、店に集まって店員や近所の人とわいわい過ごせる場を楽しいと感じるのでしょう。毎日、大勢の高齢者が店舗に吸い込まれていきます。

私たちは消費者センターにも確認しましたが、法的にはギリギリセーフな業態らしく、何もできないと言われてしまいました。何かを買わされたとしても、クーリングオフするには本人の意思がないとできません。物忘れが多く、洗脳された高齢者というターゲット設定の巧妙さに感心してしまいます。

ある地域では、そうした業者が来ると、「高齢者をターゲットした詐欺まがいの商法に注意しましょう」と回覧板を回すのだそうです。すると急に夜逃げするように店がなくなると口コミで読みました。そこで私たちも行政のいろいろな部署に相談。地域の民生委員さんやケアマネさんなどから、高齢者のいるお宅に対して注意喚起をしてもらえることになりました。

私たち家族が「だまされてるよ」と言うと、「そんなことない!」と聞く耳を持たない高齢者でも、ケアマネさんや民生委員さんといった第三者に言われると「そうなのかも」と思うこともあります。

そんな注意喚起をしてくださったおかげか、その店はある日突然、なくなりました。

もしスマートスピーカーがなかったら、まず、母がその店に通っていることすらも気づかなかったでしょう。

こうした高齢者狙いの詐欺は、実はとても多く、高齢者自身がだまされたと気づかないパターンも多いのが現実です。気づいていないので、家族にも話さないこともあります。