大宴会が前提の時代に「客室を絞る」決断

ここで、温泉旅館「妙見石原荘」の土地と創業の歴史を紹介しておきたい。

妙見石原荘のある鹿児島県・霧島温泉郷には、坂本龍馬と妻・おりょうにまつわるこんな逸話がある。慶応2年(1866年)3月、寺田屋事件で九死に一生を得た龍馬が西郷隆盛らのすすめで傷を癒しに訪れ、2人が生涯で最も楽しい時間を過ごしたといわれる。この旅は後に、「日本で初めての新婚旅行」として知られるようになる。

石原荘がこの地に創業したのは、龍馬の歴史からおよそ100年後の1965年。高度経済成長期の真っただ中だった。開業から20年近くは、老人会や団体の宴会客を中心とした、いわば“昭和の温泉宿”の典型だったという。だが、時代が進むにつれ、旅館のあり方にも徐々に変化が迫られることになる。