だが、朗報もある

少し脱線してしまったが、面倒なことについて考えるだけで苦痛を経験するという話に戻そう。あなたはふだんの生活でこの苦痛に気づいていないのかもしれない。

それらはたいてい無意識に起こるからだ。

たとえば、学校から帰ったら勉強しようという計画を立てていたのに、夜、床に就いたときに勉強しなかったことに気づくことがある。何があったのか?

潜在意識の働きが、あなたを苦痛から遠ざけたのだ。あなたを苦痛から逃げさせて快楽を追求させようとしたのだ。

そこで、あなたは快楽を得るために、しばらくテレビを見たり、ゲームをしたり、友人と外出したりしたのかもしれない。先延ばしグセが無意識にあなたを突き動かし、苦痛から逃れて快楽を追求するように促した結果だ。

このパターンが自分の人生で繰り返されているのを知るには、改善すべき行動を自覚するという気づきが必要になる。だが、朗報もある。

ソファに座りポップコーンを食べている男性
※写真はイメージです

「想像」から生まれる「苦痛」というまぼろし

ある研究によると、苦になることを先延ばしにしない簡単な方法があるのだ。

それは、事前にあれこれ考えないで、とにかくやるべきことに取りかかることだ。

やるべきことに取りかかった瞬間、その苦痛はあっさりと消える。

先延ばしの研究で知られるオークランド大学(ニュージーランド)の教育学者バーバラ・オークリー教授はこう言っている。

「私たちは苦痛を感じることを先延ばしにする傾向がある。MRI検査による複数の研究で、数学嫌いの子どもが数学の勉強を避けようとするのは、それについて考えるだけで苦痛を感じるからだとわかった。数学について考えると、苦痛を司る脳の中枢部分が反応するのである。

苦痛を感じるのは、それを想像するからだ。数学嫌いの子どもが実際に数学に取り組むと、その苦痛はすぐに消える」

じつに興味深い指摘である。

苦痛を感じるのは、想像によるものであり、面倒なことを実行することによるものではないということだ。