「国民皆保険」が危機的状況に!?

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社会保障の異変(~2025)(PIXTA=写真)

このままでは国民皆保険という恵まれた状態にある日本の社会保障制度がもたない。そのためすでに実施されている保険料率の引き上げと同時に、さまざまな給付制限が予想される。例えば医療費の自己負担率の引き上げ。あるいは米国などではすでに導入されている「デダクティブル」(deductible)と呼ばれる自責制度の導入などだ。

現在は、仮に3000円の医療費がかかると、病院の窓口では自己負担分の3割に相当する900円を支払う。が、もし自責制度が導入され自責額が500円とすると、まず3000円から500円を差し引き、残りの2500円に対して3割を負担する。すると自己負担分は500円+750円=1250円となる。自動車保険の免責制度をイメージすると理解しやすい。

自己負担額が1000円、2000円であればドラッグストアで販売されている風邪薬の値段に近くなるので、風邪は市販薬で治す人が増えて医療費抑制の効果がありそうだ。これが1万円になると、多くの人が安易な受診を控えるようになるだろう。

今後、現役世代は年金・医療・介護という全方位的な備えが必要になる。なかでも「介護の備えが大切」とFPの大竹のり子氏はアドバイスする。

「現役世代の方々は医療や年金の備えは自分事として捉えているのに、なぜか介護は親世代の問題と考えています。介護だって自分事だし、金銭面で親世代の世話をする余裕はないはずなのに、自分が親世代の介護費用を負担するという発想の人が多い」

それでは将来自分や配偶者が要介護状態になったとき、悲劇に見舞われる。

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社会保障の異変(~2050)(PIXTA=写真)

「介護保険にも自己負担分(介護費用の1割)があります。ところが家計が厳しくて自己負担分が出せないばかりにせっかくの制度が使えない人もいます。これまで保険料を支払ってきたのにイザというときに利用できないなんてもったいないですよね」(大竹氏)

親とはいえリアルな懐事情は聞きにくいものだが、やはり親世代には独自の介護資金計画を考えてもらい、現役世代は自分の要介護に備えるという割り切りも必要になる。それは決して親の介護を放棄するということにはならない。

【図版※注】※1厚生労働省2009 ※2厚生労働省2005 ※3厚生労働省2007 ※4鈴木亘氏の試算 ※5日本経済研究センター2009 ※6厚生労働省2003 ※7厚生労働省2006 ※8政府推計2010 ※9厚生労働省2008 ※10岩崎千恵らによる推計 ※11 I MF2011 ※12「男女共同参画白書」2006 ※13米国国家情報評議会2008 ※14財務省2008 ※15社人研2005

学習院大学経済学部教授
鈴木 亘

1970年生まれ。専門は社会保障論、医療経済学、福祉経済学。著書に『社会保障の「不都合な真実」』。

エフピーウーマン代表
大竹のり子

1975年生まれ。ファイナンシャルプランナー。著書に『老後に破産しないお金の話』など。