NYに比べても日本の住居は寒すぎた

緯度が北にあるニューヨークは松江よりもっと寒いのだけれど、欧米の住居は密閉されてセントラルヒーティングを完備している。屋外は氷点下でも、部屋の中は暖かく薄着で過ごすことができる。それに比べて日本の住居はとても寒い。日本の家屋は梅雨の湿気や夏の暑さ対策で、開口部が広く風通しの良い構造になっている。そのため冬場には隙間風があちこちから入り込んで家の中を冷やす。暖房器具も貧弱なものしかなく、炬燵や火鉢では部屋全体を暖めることができない。

「その頃の松江には、まだストーヴと申す物がありませんでした」

後にセツがこのように語っている。ハーンは冬になるとストーヴを恋しがっていたという。冬には心身が不調に陥ることも多くなった。ハーンは寒いのが苦手だったとよく言われるが、日本の住環境が過酷すぎるのだ。しっかりと断熱されて暖房設備が整った外国人居留地の洋館やホテルとは違う。欧米人が日本家屋での冬を体験すれば、誰もがハーンと同じ反応になるだろう。