「8時間睡眠がベスト」とはよく言われる健康情報だが、本当なのか。睡眠コーチの角谷リョウさんは「大規模調査で、死亡率、糖尿病リスク、心血管疾患リスクのすべてが最も低いのは8時間ではなく、それ以上だとむしろリスクであることが判明した」という――。

※本稿は、角谷リョウ『仕事の質を高める休養力』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

笑顔で眠っている女性
写真=iStock.com/Irina Belova
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驚愕事実「8時間睡眠は実は5時間睡眠とほぼ変わらない」

「人間は8時間寝るのが理想」

誰が言い始めたのかわかりませんが、この“常識”があなたの健康を蝕んでいるかもしれません。本コラムでは、そんなヤバい話を最新の信頼できる研究成果を交えながらお届けします。

アメリカの大規模調査(100万人規模)によれば、睡眠時間と死亡率の関係は美しいU字カーブを描きます。つまり、少なすぎる睡眠はもちろん危険ですが、長すぎる睡眠も同じくらい危険。なんなら8時間以上の睡眠は、5時間睡眠とほぼ同等のリスクを叩き出すという、悪夢みたいなデータがあるのです。

日本の調査(JACC Study)でも同じ傾向が見られ、10時間睡眠の死亡リスクは男性で1.73倍、女性で1.92倍と爆上がり。短時間睡眠で「最近、寝不足でね」とボヤいているおじさんより、長時間寝ているあなたの方が実は危ないってことです。

8時間寝るのが健康的だと信じていたみなさん、ここでぜひ考えを改めてください。

私も睡眠の専門家になるまで全然知らなかったので、それが当たり前の常識だったことはしかたありません。でも、これからは「長く寝れば、眠るほど健康」なんて古い常識は、この瞬間からスッパリ忘れてください。

じゃあ、何時間寝ればいいのか?

答えはシンプル。6〜7時間です。

このゾーンは、死亡率、糖尿病リスク、心血管疾患リスク、すべてにおいて最も低いゴールデンタイム。6時間睡眠の人たちは、7時間睡眠と同等もしくはそれ以上に安定した健康状態を保っています。長く寝て、脳みそをふやけさせるより、6時間だけギュッと寝る方が、体も頭もキレがいいのです。

もっと怖いのは、「8時間睡眠絶対主義」のワナです。無理に寝ようとすることで、睡眠の質はむしろ悪化します。浅い眠りで脳は回復できず、昼間のパフォーマンスもダダ下がり。つまり、“8時間寝ようと努力する人”は、“夜の営みで頑張りすぎる人”と同じ悲劇に陥ります。頑張った割に満足感ゼロ、むしろ疲労感マシマシ。