シンプルで信頼性の高い潮流発電装置の開発を目指す

北九州市らと連携して、潮流発電の実験を進める九州工業大学の平木講儒准教授。

北九州市らと連携して実験機の開発を行う九州工業大学の平木講儒准教授は次のように言う。「水のエネルギー密度は、風のそれと比べて優に800倍以上。同じ流量から非常に大きなエネルギーを取り出すことができます。未知の部分も多いなか、試行錯誤を重ねながら私たちが挑戦を続けているのは、やはり潮流というものに大きな可能性を感じるからです」。もともと宇宙工学などが専門の平木准教授。発電の分野は初めてのチャレンジであったが、関門海峡という身近な資源を生かしたいとの思いで研究に取り組んでいるのだ。

昨年3月の実験装置の設置以来、データや情報は着々と収集されている。例えば、フジツボの付着などもその一つだ。水車のブレードにフジツボが付着すると、表面が凸凹になり回転の効率が落ちてしまうのだ。それなら、とフジツボを抑える塗料を厚く塗るなど、平木准教授らの研究室では地道な対策を進めている。

それも含めて、平木准教授はこの実証実験で大切にしているポイントがある。それは、できるだけ既存技術の組み合わせによって効率的な発電を実現させることだ。将来の実用化を視野に入れたとき、特別な技術が求められるようでは、潮流発電というものがなかなか広がらないからである。言うまでもなく、潮流発電の可能性は関門海峡だけにあるわけではない。シンプルで信頼性の高い装置ができれば、それだけ利用できる場所も拡大するのだ。実際、この北九州市でのプロジェクトについては、すでに複数の自治体などから問い合わせが寄せられているという。

ニッカウヰスキー門司工場赤レンガ倉庫前の花壇に設置されたイルミネーション。潮流で発電した電力で点灯する。

ところで、再生可能エネルギー全般の開発に力を注ぎ、市民に向けてもその活動を積極的に発信している北九州市は、潮流発電プロジェクトでもユニークな取り組みを行っている。実験装置で発電した電気によるイルミネーションの点灯だ。発電機を設置したニッカウヰスキー門司工場の花壇にイルミネーションを取り付け、それを見学できるようにしているのである。

先に、同市の太陽光発電事業においても同様の取り組みがなされていることを紹介したが、やはりエネルギーを目に見える形にして市民に示すことは大切だろう。それによって、エネルギーや電力への意識が高まれば、節電など具体的な行動につながる可能性もあるからだ。そうした好循環を重要視しているのが、北九州市の特徴である。

まだまだ始まったばかりの北九州市の潮流発電プロジェクトだが、海が有しているエネルギーはとにかく膨大。その一部でも効率的に取り出せれば、世界のエネルギー事情を大きく転換することも可能だ。その国土の広さでは世界で60番目ほどの日本も、領海、排他的経済水域、大陸棚を合わせた広さは世界第6位。屈指の海洋国・日本で進行する新エネルギー開発のこれからに期待したい。