野球部員の暴力問題をめぐり、広陵高校が10日、甲子園2回戦からの出場辞退を決めた。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「不祥事に対する高野連の『処分基準』には疑問が生じる。教育をタテマエにする姿勢に無理があるのではないか」という――。
広陵の出場辞退を受け、報道陣の取材に応じる日本高校野球連盟の宝馨会長(左)。右は大会会長の朝日新聞社・角田克社長=2025年8月10日、兵庫県西宮市
写真=時事通信フォト
広陵の出場辞退を受け、報道陣の取材に応じる日本高校野球連盟の宝馨会長(左)。右は大会会長の朝日新聞社・角田克社長=2025年8月10日、兵庫県西宮市

大会途中の「辞退」という異例の結果に

第107回全国高校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園に出場中の広島県代表・広陵高校をめぐり、議論が沸騰している。

広陵高校は、8月6日付で「令和7年1月に本校で発生した不適切事案について」という「重要なお知らせ」をウェブサイトに明らかにした。SNS上では、7月末ごろから「被害生徒」の保護者を名乗るアカウントが、この事案についてポストを続けていた。

広陵高校によれば、今年1月、同校の寄宿舎の部屋で、2年生部員4名から1年生部員1名(学年はいずれも当時)に対して別々に、胸を叩いたり、頬を叩いたりといった暴行を加えた。後日、加害生徒4名は謝罪したものの、被害生徒は3月末に転校している。

同校は、広島県高野連に報告し、日本高野連会長名による厳重注意を受け、加害生徒は1カ月の対外試合出場禁止処分となった。

広陵高校の「重要なお知らせ」でも触れられているように、被害生徒の保護者が「学校が確認した事実関係に誤りがある」と指摘しており、SNS上では、いかにひどい暴行だったのか、非難が続いている。

その結果、広陵高校は甲子園2回戦からの出場を辞退することになった。なぜ、最初から出場を辞退しなかったのか。なぜ、日本高野連は広陵高校の出場を禁止しなかったのか。

同校の校長が、広島県高野連の副会長を務めていることから、処分に忖度があったのではないか、とも取り沙汰されている。

ただ、ここでは、広陵高校を糾弾したり、あるいは逆に、加害していない部員は悪くないと庇ったりするのではなく、日本高野連の対応の理由を考えなければならない。